転職を考える人たち向けのセミナーや相談会が各地で開かれている (c)朝日新聞社
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「転職バブル」と言われるほど、活況な転職市場。人手不足により、売り手市場となっているが多くの転職希望者はワーク・ライフ・バランス(WLB)を重視しているという。

 リクルートキャリアの転職情報サイト「リクナビNEXT」の調べでは、転職におけるキャリア志向は3割弱にとどまる。非キャリア志向のほうが5割と上回った。ネットの検索項目でも「在宅勤務」「残業」といったキーワードが上昇傾向だ。リクルートキャリアは「ライフフィット転職」というキーワードを今年から提唱している。

「育児や介護をしながら働く人はこれからも増える。家族優先の働き方を前提に仕事を探す人に、企業も向き合わないといけない」

 リクナビNEXTの藤井薫編集長(51)は、人手不足が今後さらに深刻化し、優秀な人材が労働時間などの条件を主張しやすくなると予想する。

「人口が急速に減少し、2030年には労働人口が約820万人減るとの見通しもある。労働人口が多い時代は、企業はたくさん採用し、会社に合わない人に辞めてもらう手法をとれた。しかし、これからはできない。在宅勤務を認めるなど、働き続けやすい環境を支援するようになる。転職でも、譲れない条件を遠慮せずに提示する人のほうが入社後に活躍しやすい」

 転職市場での人気企業ランキングにも、WLB重視が表れている。

 大手人材会社インテリジェンスの転職サービス「DODA(デューダ)」が昨年22~39歳の5163人に「転職したい会社」を聞いたところ、働き方改革を進めるところが上位に入った。

 例えば1位「グーグル」や5位「Apple Japan」など、多様な働き方を選びやすいイメージの外資系IT企業が選ばれている。日本企業でも、本社に託児所やフィットネスクラブなどを充実させた楽天が6位。「WLBを実現できそう」という理由が多かった資生堂は8位だった。企業側もいい人材を集めるため、残業の少なさや休暇の取りやすさなどのPRに力を入れている。

 転職市場が膨らむにつれ、ネットの支援サービスも成長している。

 転職サイトなどを運営する「ビズリーチ」は、会員数がこの1年で3割ほど増えて85万人になった。

 取引のある企業は約6千社で、ヘッドハンターも約1700人いる。会員は自分の希望に沿った企業をネットで検索できる。企業の人事やヘッドハンターから、直接声がかかることもある。

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