80年代はテレビアイドルが大人気。「聖子ちゃんカット」が流行した。女子中高生は「絵文字」でなく「丸文字」で恋文を書いた。

 89年1月7日、昭和天皇崩御。元号は昭和から平成に変わった。それから半年もたたず、国民的大スターが逝った。

 美空ひばりである。
 

東京ドームで開かれた復活コンサートで、表情も豊かに歌う美空ひばり=1988年4月、東京都文京区

 本誌は、本人が死の直前にテレビプロデューサー石井ふく子に送った手紙を入手。同年7月7日号の大特集の中で全文を載せた。
 

 白い封筒。6月5日付代官山局の消印があった。石井は今、こう振り返る。

「いつもは自分の名前を『和枝』(ひばりの本名)と書くのに『美空ひばり』とあった。そんなことは初めてでしたから、それでドキッとしたんですね」

 便箋(びんせん)2枚に目を落とす。

<私も昔は、牛若丸のように働きましたが……。(中略)こんな弱気な私になったのは、五十二歳までにはありませんでした。きっと、このボロボロにいたんだ自分に気がついていなかった自分を察知したのかもしれません>
 

「『こんな弱気な私』『生きていけるよう念じ』……こんなこと書く人じゃなかったんですよ。そして『ありがとうございました』という過去形。嫌な予感がしました」
 

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