55年の「ノイローゼ」の流行も、実は本誌発。もともとはドイツ語で「神経衰弱」を指す医学専門用語だったが、同年7月24日号の本誌記事「ノイローゼと現代人」をきっかけに一般的に使われるように。同年にはノイローゼをテーマにした本が多数出版された。

 俗語研究の第一人者として知られる米川明彦さん(梅花女子大学教授)は、流行語が生まれる理由として、四つのポイントを挙げる。

「一つ目は、社会的理由。高度経済成長期の68年の流行語『大きいことはいいことだ』など、世相や社会の状況を表すのにぴったりな言葉が生まれたときです。二つ目が心理的理由。2013年の流行語『お・も・て・な・し』など、心理に訴えかけるような言葉や、まねしたくなる言葉がそうです」

 三つ目は言語的理由。語形や意味、用法に奇抜さや新鮮さがあるものや、会話の中での汎用性が高いものを指す。

「例えば、13年の流行語の『今でしょ!』。特に目新しくはないけれど、いろんなシーンで使えます」(米川さん)

 四つ目が、言語感覚的理由。「ガチョーン」(1963年)や「フォー!」(2005年)など、意味のない音を発するのが感覚的におもしろいという言葉だ。

「現代は、価値観が多様化し、個人主義が加速しているので、誰もが知る大流行語はほとんど生まれなくなった。その半面、『言葉=遊び』と捉えた、狭い世界での流行語が増えました。今後もしばらくはその傾向が続くでしょう」(同)

 流行語はつくる側の論理だけでなく、納得、共感する人がいて生まれる。まさに時代を映す鏡だ。本誌が100周年を迎える5年先には、どんな流行語が生まれているだろうか。

週刊朝日 2017年3月3日号より抜粋

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