1991年には、胃がんの手術で胃の3分の2を切った。入院中、女性看護師を7人誘ってうなぎやあわびのステーキを食べに行くという武勇伝の持ち主だが、一度だけ中村さんに、病気について漏らした。
「メイコちゃん。僕の体は、もう穴だらけでガランドウなんだよ。いっそ、女の子で埋められるといいんだけどな」
中村さんは、「どんなときでも粋な東京人でした」と懐かしむ。
俳優の宝田明さんも同い年。九年会には多忙で足を運べなかったが、戦時下の苦労を味わった共通体験もあり、2人は認め合う仲だった。40代のころ、2人は、こう励まし合った。
「俳優と振付と、ふたりがたどる道は違うが、高嶺のユリを目指すという目標は一緒。お互い頑張ろう」
宝田さんは藤村さんに伝えたいことがある。
「誘ってくれたのにバーには行けず、すまなかった。あっちで、最高においしいワインを用意しておいてくれ。一緒に飲もう」
藤村さんの献花の会は、14日正午に渋谷区の慈雲山長泉寺で行われる。
※週刊朝日 2017年2月17日号