経営していたワインバーの評判も高く、“粋”な人だったという藤村俊二さん (c)朝日新聞社
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 気が乗らないと「ひょい」と逃げたためについたあだ名が、「おヒョイ」。

 おヒョイさんの愛称で親しまれた俳優の藤村俊二さんが1月25日、心不全で亡くなった。82歳。演出家を目指して早稲田大学で演劇を学ぶものの、つまらない、と中退。東宝芸能学校、日劇ダンシングチームを経て振付と俳優の道へ。ザ・ドリフターズの「8時だョ!全員集合」のオープニングも藤村さんの振付。軽妙でとぼけたやりとりが人気で、クイズ番組から映画まで幅広く才能を発揮した。

〈もうこれで僕からの通信は終わります〉

 2015年12月。女優の中村メイコさん(82)のもとに、藤村さんのメッセージが記されたクリスマスカード兼「年賀状」が届いた。直前に藤村さんは、「ぶらり途中下車の旅」(日本テレビ系)の2代目ナレーターを体調不良で降板。以来、公の場から姿を消した。

「おヒョイさんとは性別を超えた親友でした。不調をさらすことを良しとしない、彼の美学だったのかも」

 と中村さんは振り返る。

 中村さんと藤村さんは、ともに、昭和9年生まれの芸能人でつくる「昭和九年会」のメンバー。故・愛川欽也さんらを発起人に結成され、チャリティーの朗読会やゴルフ会など社会貢献活動を行う集まりだ。月例会は、藤村さんが南青山で経営していた「O’hyoi’s(オヒョイズ)」で開催。藤村さんもほぼ毎日、店でワインやシャンパンを楽しんだ。

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