あなたの飲んでいる薬は、科学的根拠がありますか?そう問われると、「医師に処方されたので、あるに違いない」とだれもが思うはず。でも、実は根拠が乏しい薬も結構存在します。効き目がない、というわけではありません。一体どういうことかと言うと……。
自分の飲んでいる薬の科学的な根拠(エビデンス)を知りたい。そんな疑問に答えてくれるコンテンツが今秋、月600万人が使う日本最大級の医療情報サイト「QLife(キューライフ)」内に登場した。
例えば、不整脈の治療に使われる「ジゴシン」。こんな解説が記されている。
〈心房細動が頻脈を生じた場合に症状を改善する目的で使用されますが、予後の改善効果は確認できていません〉
予後とは、治療効果など病気の見通し。つまり、治療の効果に関する科学的根拠は乏しいというわけだ。
解説を担当した一人で、聖路加国際病院(東京都)の一般内科の有岡宏子医師(部長)はこう説明する。
「ジゴシンは昔から経験的に使われてきましたが、エビデンスは乏しく、使う機会が減っています」
有岡医師ら同病院の内科・予防医療チームは、様々な臨床研究の論文から薬のエビデンスを検証した。
非常に信頼性の高い臨床研究で効果が確認された薬は「☆☆☆☆☆」、副作用が有効性を上回る薬は「☆」など、5段階で評価。解説もつけている。
これらが載っているのは同社の「治療法・薬の科学的根拠を比べる」のコーナー。高血圧、アトピー性皮膚炎、胃がんなど、約180の病気ごとに治療法や薬が評価されている(欄外にアドレス)。
なぜ☆の数が違うのか。
例えば、臨床研究と一口に言っても信頼度はまちまち。最も高いのは「ランダム化比較試験」だ。医師も被験者も、本当の薬を使う群か偽薬(プラセボ)群かを知らずに試験が進む。公平で適正な方法として、最近の新薬開発でも使われる。
一方で、ランダム化ではない試験や、特定患者の症例報告だけだと弱い。こうした差が☆の数に表れる。
今回の評価は2016年改訂版で、前回は03年に実施した。ともにかかわったのは、同病院の福井次矢院長。科学的根拠に基づく医療「EBM(Evidence-Based Medicine)」を、日本で普及させた第一人者だ。
「例えば薬。“誰にでも100%効く”ものは、この世の中に存在しません。だからこそ、効く確率が高いものは何かを臨床研究で調べ、効果の高いものを使うEBMの考え方が大事なんです」(福井院長)