築地市場の豊洲移転問題に続いて五輪会場問題が急浮上したのは、慶応大学教授・上山信一氏が特別顧問を務める「都政改革本部」の調査チームが9月29日に報告書を公表してからだ。
同本部は小池百合子都知事の都政改革のエンジンともいわれている。3兆円超の可能性もあるとした総費用の削減が必要と指摘し、施設整備計画の見直しを提言。先月18日の小池知事と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長との会談でも、整備費の見直しが話し合われた。
11月2日、都庁議事堂3階の一室で開かれた「オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員会」では、時計の針を逆戻りさせるように、調査チームの報告書がやり玉に挙がった。
冒頭から、自民党の吉原修都議はこう憤慨した。
「(東京五輪)調整会議の現在の態勢をあたかも『社長と財務部長のいない会社と同じ』だと一方的に批判した。なりたちや趣旨を本当に理解されているのか」
調整会議とは東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長、東京都知事、五輪担当相、文部科学相らで構成し、組織委員会運営の方向性を決める。
報告書では、
「全体推進体制は各部門が必要と考える経費を計上して、しかも、最終的に組織委が破たんするとそのツケは全て都庁が払う仕組み」
と指摘していた。
吉原都議の質問が続く。
「チームの特別顧問はなぜ、テレビで見解を話しているのか。都としての見解と誤解されるのではないか」
公明党の遠藤守都議からは調査チームのメンバーの五輪の専門性について疑問の声が上がった。都の答えはこうだった。
「調査チームのメンバーの方々は当初、オリンピック・パラリンピックの詳しい情報をお持ちではなかったため、まずは概要からご説明させていただきました。約2カ月間にわたり、ヒアリングや資料説明を重ねさせていただきました」(担当総務部長)
議員の中から、「何年も議論を重ねてきたのに、わずか2カ月の議論でわかるのか」という声が飛ぶ。
五輪費用削減は都議にも突きつけられている課題のはずなのに、問題を指摘した調査チームに対する批判が続く。先月18日、来日したIOCのバッハ会長に、小池知事が手渡した文書にも、疑問の声が出た。文書には調査チームの報告書のポイントが示され、「とめどなく費用が増える懸念につながっている」などと書かれていた。
吉原都議はどういう経緯でつくられたものなのかを問いただした。都政改革本部の担当部長が答える。