ポーランド1988
ポーランド1988
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紆余曲折を経て決定版となった伝説のワルシャワ・ライヴ
Porland 1988 (Cool Jazz)

 このワルシャワ・ライヴも複雑な家庭事情を抱え、つい先般、ようやくにして和解が成立、クール・ジャズ家という収まるべき場所に収まった。いやー長かった。ちょっと復習しておこう。88年のワルシャワ・ライヴ、最初はご当地限定制作のコレクターズ・アイテムとして登場した(まあブートLPではありました)。CD時代に入って『スカーレット・レター・アクト1』として再登場、しかしながら高音質ということから評判を呼び、ここでいっきに伝説のワルシャワ・ライヴ、ブート初心者を巻き込んで市民権を得る。いわゆるブートCD初期の懐かしい思い出ではあります。もっとも『スカーレット・レター』はわずか5曲の収録に終わり、クレジット関係もミスが多かった。

 次に登場したのがスイボクという謎のレーベル。世間では「気持ち悪い」「信用できない」と悪評が目立ったが、筆者など逆に「スイボクさん」と呼ぶくらい親近感を覚え、まずはともあれスイボクさんがお出しになった『ア・スピーク・イン・アン・アイ』というワケわからんタイトルのCDを聴き驚いたしだい。そう、このCDこそワルシャワ・ライヴのロング・ヴァージョンであり、『スカーレット・レター』の超ヴァージョン・アップ盤であったわけです。

 ところが今回クール・ジャズさん、いやクール・ジャズから出たのは、最長と思われていたスイボクさんより2曲多い「もっと長いですよヴァージョン」というから、まだまだブート界、なにが眠っているかわかりません。その増加した2曲とは《タイム・アフター・タイム》と《ムーヴィー・スター》(8,9)で、他の演奏もコンプリート状態になったということなのでしょうか、2枚組が3枚組にパワーアップされている。したがってこのクール・ジャズ盤では「1」から「9」までが1回目、「10」以降が2回目のコンサートとなっている。

 両コンサートとも、なんといってもオープニングの《イン・ア・サイレント・ウェイ》がかっこいい。2台のキーボードにオリジナル・メロディーを弾かせ、それをバックに帝王が《サイレント》とまったく無関係に音を吹き放っていく。このいいかげんさ、やる気がありそうななさそうな案配具合がたまらない。本作で唯一ひっかかるのは《TUTU》ですね。ロバート・アーヴィングの退団がここに響いている。"キメ"が甘い。これは"キメ"が命の曲、そこが新人ジョーイ・デフランセスコにはわかっていない。もういいけど。

【収録曲一覧】
1 In A Silent Way-Intruder
2 Star People
3 Perfect Way
4 The Senate / Me And You
5 Human Nature
6 Wrinkle
7 Tutu
8 Time After Time
9 Movie Star
10 In A Silent Way-Intruder
11 Star People
12 Perfect Way
13 The Senate / Me And You
14 Human Nature
15 Wrinkle
16 Tutu
17 Time After Time
(3 cd)

Miles Davis (tp, key) Kenny Garrett (as, fl) Joey DeFrancesco (synth) Adam Holzman (synth) Foley (lead-b) Benny Rietveld (elb) Ricky Wellman (ds) Marilyn Mazur (per)

1988/10/30 (Warsaw)