モデルの知花(ちばな)くららさんが、「朝日歌壇」の選者である永田和宏先生に短歌を詠む秘訣を聞く本誌連載『知花くららの「教えて!永田先生」』。今回は「倒置法と破調の効果」について聞いた。
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知花:今回は私自身がわかっているようでわかっていない倒置法と破調についてお聞きしたいと思います。まずは倒置法について教えてください。なんとなく使ってみたりしているんですけど、どこか曖昧なままで。倒置法ってどういうときに使うと効果的なんですか?
永田:やっぱり言いたいことをハッキリ強調させるときでしょうね。たとえば与謝野晶子の「やは肌のあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君」。本来の語順なら「道を説く君はさびしからずや」だけど、倒置することで「道を説く君」にグッとフォーカスを絞れるわけ。
知花:ふむふむ。でも倒置法にすれば、なんでもいい感じに強調されるわけじゃないですよね。注意すべき点はありますか。
永田:倒置法にすると最後に何が来るかと期待させちゃうので、それがたいしたことなかった場合、失敗してしまうのと、あとは多用しないことね。倒置法にすると、ここが言いたいので見てくださいね、みたいに強制することになるので、多いと品が悪くなるわけ。ここぞというときに倒置法にするから効果があるわけで、多すぎると逆に単調で薄っぺらく感じられるんですよ。倒置法の歌を連作で送ってくる人が多いから、そこは注意したほうがいい。
知花:歌をどう構成するか、自分では気づかないクセってあるから、意識的にパターンを変えて詠んでみるのもいいかもしれませんね。
永田:うん、それはいいでしょうね。
知花:次は破調について。字余り、字足らずはどれくらい許されますか?
永田:近代とか現代短歌では少々の字余りは大丈夫です。というか、あえて破調にすることもあるくらい。
知花:あえて!?
永田:うん。いつも五七五七七にキッチリ収まってると退屈しちゃう。
知花 え、でもそれが短歌の決まりですよね?
永田:ルールは破られるためにあるもんですから。
知花:アウトロー!(笑)