4月の大地震の余震が続く熊本の阿蘇山で10月8日未明、36年ぶりに爆発的噴火が起こった。列島の地下深く、どんな事態が進行しているのだろうか。地球物理学(地震学)の専門家、島村英紀・武蔵野学院大学特任教授はこう警告する。
「いま熊本で起きていることは、現代の日本人が初めて体験する現象なのです。今後、連動的に大きな地震が起きる可能性がある」
阿蘇山の噴煙の高さは実に1万1千メートルに達した。
島村氏はこう話す。
「震源となった熊本地方から阿蘇山の真下には、日本最長にして最大の活断層である中央構造線が走っています。熊本地震がこの中央構造線を刺激して、阿蘇山の噴火に影響した可能性があります。実際に大分や熊本市から南西の八代市など、この構造線に沿って震源が移動しています」
九州における中央構造線の存在には諸説あるが、島村氏は鹿児島付近から始まり、熊本、大分を経て四国北部、紀伊半島から長野まで達する説を取る。鹿児島の川内原発、愛媛の伊方原発近くもかすめる。
地震には、海域の大陸プレートと海洋プレートの境界で起きる「海溝型」と、内陸部の活断層の歪みで発生する「内陸直下型」がある。東日本大震災は前者で、阪神・淡路大震災や熊本地震は後者に当たる。
「日本には毛細血管のような活断層が2千余りあることがわかっていますが、実際には3倍の6千くらいあると見られています。熊本も阪神・淡路と同じマグニチュード(M)7.3ですが、熊本のほうが余震が長く続いているのは、大動脈たる中央構造線が活動を始めたと考えられるからです」
島村氏によれば、中央構造線の影響で起きたと考えられる地震は、いまからおよそ400年前の慶長時代にまでさかのぼるという。1596年9月上旬に伊予、豊後、伏見でM7クラスの地震が相次いだ「慶長の連動地震」と呼ばれるもので、広範囲に被害を出した。今後、中央構造線に沿って同様の大地震が起こるのか。