もう一つ、Aさんが不審な点を指摘するのは、点滴の保管だ。点滴は17日の午前に薬剤部からナースステーションに運ばれ、鍵を掛けていない状態で保管されていた。ところが、Aさんが目撃したのは、ナースステーションと個室の横にある、ほとんど使われていないデイルームのテーブルの上に、段ボールに入った点滴が置かれている様子だった。

「点滴には患者さんの名前が書かれたシールは貼ってありませんでした。他の病院ではそういう光景を見たことがありません」

 関係者のこんな証言もある。4階すべてが寝たきりの患者という報道もあるが、実際は奥の大部屋には歩行器などを使えば移動ができる程度の患者が入院。ナースステーションに近い病室は重症度が高く、寝たきりの患者が集まっている。

「経費節減のためか照明を一部落としていて、病棟は薄暗い。見舞客もほとんど見えないので、ひっそりしている」(関係者)

 院内で働く看護師にトラブルが起きていることも、明らかになっている。

 横浜市には7月5日、8月12日にトラブルを告発するメールが送られてきた。いずれも監査課宛てで、医療安全課に転送された。最初のメールには「カルテの紛失があった」ことと、「看護師のエプロンが切り裂かれた」ことが、箇条書きのような形で記されていた。市はこれを放置したわけだが、その理由についてこのように話す。

「市には医療機関に対する内部告発や苦情メールが年間約5千件寄せられます。『調べてほしい』『病院に伝えて』という内容であれば動くこともありますが、単に事実だけなら、人手も足りないこともあって対応していません」(医療安全課)

 2通目は「病棟で飲み物に漂白剤らしきものが混入され、看護師のくちびるがただれた」と被害が発生していたことから、9月2日の通常の立ち入り検査時に病院側に確認。事務長が認めたため、口頭で再発防止を促した。

 3度目の告発メールが送られたのは、9月20日。「点滴に漂白剤(実際は商品名)らしきものが混入されることがあった。警察に通報するようです」という内容だった。このときは「病院が警察に通報するのであれば」ということで動かず。同課が事件を知ったのは23日夜だった。現在、市は立ち入り検査を検討中だ。

 さらに、メールとは別途、何者かがツイッター上で市に告発メールを送ったことなどをつぶやいている。内容や時期から病院関係者に近い人物と思われる。

 事件は病院の4階という限られた空間で起こっていて、かつ点滴に薬物を混入するという専門性が必要なことから、犯人は「内部の関係者ということも否定できない」(高橋院長)。捜査関係者によると、当時勤務していた看護師やメールを送った人物などに事情を聴いているという。

週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋

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