
最近ダース・ベイダー風の容貌の鬼で豪快にコーラのCMに登場、お茶の間の話題になっている英国俳優ジュード・ロウ(43)。新作は「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」(10月公開)。演じるのは、37歳でこの世を去った天才作家、トマス・ウルフだ。
──初めて脚本を読んだとき、トマス・ウルフという人物についてどう思いましたか?
「彼の中には強い痛みと、大きな不安があると思った。パーキンズや他の編集者にあてて書いた手紙の中に、それが表れていたんだ。また人が自分をどう思うかを異常に気にかけていた。それがあまりにひどいので、手紙を読んでいるうちに、人がどう思おうと関係ないだろう!!という気持ちも湧いた。自分の気持ちを文章の中につぎ込む能力は類をみない人だった。だから多くの矛盾を抱えた人だよ。個性が比類なく大きい人で、だからこそおもしろい。知り合いになって、朝の5時に一緒に飲もうぜ、なんて言うような人だろうから、私生活では避けたい人でもあるけれどね(笑)」
──ウルフの才能を見いだした編集者のパーキンズはヘミングウェイやフィッツジェラルドといった後の文豪を発掘しました。トマス・ウルフが彼にとって特別な存在だったのはなぜだと思いますか?
「この映画ではパーキンズとヘミングウェイとの関係、またはフィッツジェラルドとの関係を扱うこともできた。ところがウルフになったのは当時作家としてウルフが彼らより人気があったからだろう。しかし現在における知名度はそれほど高くない。だからこそ映画も自由に作れたのだと思う。少し年上の友達で、ウルフを学校で習った友人がいるんだが、ウルフは70年代の半ばにイギリスでは教科課題から外されたんだ。だから文豪としてウルフはあまり知られていない。残念なことだよ」
──映画の原題は「ジーニアス」、天才です。天才と呼べるような人に出会ったことがありますか?
「映画以外の世界でたった一人いる。というか天才と聞くとその人が心に浮かんでくる。天才というのは僕にとって、その分野で秀でた業績を達成した人で、常識的な思考を超えた自由な発想の持ち主、というふうに思える。その時代にある常識的な考え方を超えて思考できる人。自由な視野と、それに執拗に取り組む姿勢を持ち、すでにある常識を超えて考えようとする、未来的な発想を持つ人だよ。僕はそんな人にたった一人出会ったことがある。アートの世界で」