また、「サージェント・ペパーズ~」の“コンセプト・アルバム”の手法は、68年に出たスパイダースの「明治百年すぱいだーす七年」やタイガースの「ヒューマン・ルネッサンス」、ランチャーズの「フリー・アソシエイション」、フォーク・クルセダーズの「紀元弐阡年」など、GSほか日本の多くのバンドのアルバム作りに影響を与えた。

 そうした音楽やファッションの影響もさることながら、より重要なのは、ビートルズが持ち合わせていた“自由な精神”だった。皮肉で辛辣な発言をユーモアでくるみ、周りを煙に巻いたり笑いに包みこんだりできる、持って生まれた図太さ。「エレキ・ギターや長髪は不良の象徴だ」と言われた当時のロック好きの若者に、ビートルズの言動や立ち居振る舞いがどれだけ勇気を与えたことか。

「私は私自身なのよ。好きな格好をして、好きなように生きていい。そういう考えを彼らから学んだの」

 映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK」で女優のウーピー・ゴールドバーグはそう語っているが、野球場でのコンサートやプロモーション・ビデオの制作をはじめ、“新しいことをやろうとしたのではなく、好きにやってみたら新しいことだった”という事例がビートルズには実に多い。

 そんな彼らの精神を受け継いだロック・バンドは、もちろん現在の日本にもたくさんいる。たとえば先日聞いたこんな発言──。

「“ロック・スターこそポップ・スターである”という土台を作ってくれたのはビートルズ。だから私たちも自分たちのロックができる。ビートルズは最強の先輩」(GLIM SPANKYの松尾レミ)

 ビートルズは、永遠に現役を退くことのない4人組として、日本だけでなく広く世界のロック・バンドに影響を与え続ける存在であり続けることだろう。(藤本国彦)

週刊朝日 2016年9月23日号