真夏の首都・東京を賑わせた東京都知事選のお祭り騒ぎもようやく終局。有権者へのリップサービスの末に勝利を手にした候補者は、今度は都政の厳しい現実に向き合うことになる。1300万人都市の舵とりはうまくいくのか。まずは、小池百合子・新知事を阻む三つの「壁」との戦いが始まる──。
三つどもえの激戦が繰り広げられた東京都知事選だが、小池氏が当選を果たし、初の女性都知事が誕生することになった。
選挙中も自民党東京都連を「ブラックボックス」などと激しく“口撃”していた小池氏。新都知事となり、「都議会のドン」と呼ばれる自民党都連幹事長の内田茂都議や、内田氏が強い影響力を持つとされる都議会自民党の厚い壁が立ちふさがることになる。
中でも最初の関門となりそうなのが「右腕」となる副知事選びだ。副知事は知事の意を受けて実務を担う重要なポストだ。石原慎太郎氏は3選後の2007年に作家の猪瀬直樹氏を副知事に起用して話題をつくり、1960年代に東龍太郎都知事の副知事として頭角を現した鈴木俊一氏は、3期続いた美濃部都政後に都知事に就任、4期16年の長期政権を築いた。『都知事』(中公新書)の著書がある中央大学の佐々木信夫教授(行政学)がこう語る。
「都政の経験がない小池氏としては、旧自治省系の次官経験者など地方自治の実務にたけた大物副知事を起用して体制を安定させたいところでしょう。それが筋だと思いますが、ただ、現在の4人の副知事は舛添要一前都知事の辞任間際の6月に任命されたばかりで、副知事人事には都議会の同意が必要。4人のうち1人を交代させて『右腕』を送り込もうとしても、議会に否決される可能性がある。そうなると、都議会との関係がいきなりギクシャクしてしまうことになります」
小池氏が新副知事擁立に動いた場合、8月の臨時議会か9月の定例議会で、早くも議会との“第1ラウンド”が始まる可能性がある。
次に新知事を待ち受けるのが、11月7日に新市場の開場が予定されている築地市場(中央区)の移転問題だ。11月は年末の繁忙期に向けて多忙を極めることに加えて、豊洲新市場(江東区)の施設の使い勝手の悪さや土壌汚染対策への不安など問題点が次々と明るみに出ている。4月に行われたアンケートでは、600近くある水産仲卸業者のうち約8割がスケジュールの見直しを希望するという異常な事態となっている。