作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、都知事選を制した小池百合子氏の政策から、都政に迫る“ブラックな政治”を危惧する。

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 6年前、2010年の参議院選挙で、島尻安伊子さんは沖縄県民にハッキリと約束していた。普天間の県外移設と、地位協定の見直しに取り組みたい、と。日本の政治家の嘘には耐性がついてしまってはいるけれど、それでも、これほどの公約を全く守ろうとしないのは、単なる嘘つきという以上の「悪」を感じてしまう。結局、政治家として彼女がしたことは、辺野古基地を推し進め、基地に反対する県民のことを「責任のない市民運動だと思っている」と発言し、沖縄・北方担当相なのに「歯舞」を読めず……。

 今回の参議院選挙、多くのメディアは与党大勝とか書いているけれど、キッチリ島尻さんが落ちてくれたことは(しかも現職大臣、もう一人落ちてますものね!)、なかなかのもんじゃないのよ、と私はちょっとホッとしてる。

 むしろ、選挙の後、一般人として引き続き大臣やっちゃっている島尻さんの図太さが、じわじわと怖い今日この頃。これじゃ、選挙した意味、ないじゃん! しかも投票日の翌日に、米海兵隊のヘリパッドの建設のために、沖縄の東村高江地区で工事が再開されたという。本土からも機動隊が500人も派遣されて、抗議する市民を排除している。

 
 オスプレイが飛んでいるのを、東京に住む私は見たことがない。沖縄の友人に聞くと、オスプレイを下から見上げると、すごく大きくて、ふらふらと飛んでいて、不気味なのだと言っていた。そのオスプレイが、今、高江地区の上空には毎晩飛んでいる。騒音もひどく、夜の10時で最高99.3デシベルを観測したこともあった。100デシベルといえば、電車の通るガード下並みの騒音だ。つまりはオスプレイが飛んでいるときは、生活が中断させられる。人間だけじゃない。やんばるの豊かな自然も破壊されている。

 そういうことを、島尻さんは、どう考えているんだろう。この人のHPでは「台所から政治を変える!」と「女らしい」スローガンがあげられているけれど、やってるのは「永田町からの支配」。台所臭だして権力振るうって、ほんと悪い女だわ~!

 東京にいて、東京の新聞読んでると、オスプレイが見えないどころじゃない。世界の中心が東京にあるような気分になりそう。沖縄が見えない。政治家に一番苦しめられている人の声が、聞こえてこない。

 で、都知事選だ。友人がタクシーに乗る度に「運転手さんは誰に入れる?」と聞くと、高い確率で小池百合子さんだという。自民党のオジサンに疎外されている感が、同情を誘っているらしい。

 小池さんの政策を読んだ。保育所は規制緩和する方向、そして都の土地を韓国人学校に貸すという、舛添さんの決定を無効にすることを公約にしていた。小池さんには島尻さんがアピールする台所臭はないけれど、女王様感漂う、狭量で冷たいブラックな政治になる予感ぷんぷんするよ。生活握られてるのは、こっち。同情してる場合じゃないと思う。

週刊朝日 2016年8月5日号