林:確かにいないです。

三平:でも番組からは、「キャラづくりはしないでくれ」と言われてます。噺家って自分でキャラをつくりがちですが、「笑点」は6人のメンバーと司会者のやり取りなので。「みんながつくり上げてくれるまで待ちましょう」と。

林:少しは慣れました?

三平:ぜんぜん慣れないです(笑)。(林家)たい平兄さんは先代の(三遊亭)圓楽師匠に「君は3年で慣れて早かった。一人前になるには10年かかるよ」って言われたそうです。入って1、2年は、無我夢中でやるしかないと思います。

林:まだ遠慮してらっしゃる様子ですが、それもまた初々しくていい感じですよ。

三平:年内は一生懸命いい答えを考えることに徹して、年明けぐらいから、少しずつ先輩方へのツッコミもできるようになればと思ってます。慣れてからじゃないと失礼になりますから。

林:三平さんはもともと人気者でしたけど、国民的番組のレギュラーともなると、その前とは知名度がまた違うでしょう。

三平:このあいだラーメン屋に入ったら、チャーシューが2枚ついてました(笑)。あと、若い子が声をかけてくれるようになりました。

林:「笑点」ってお年寄りが見るものと思いがちですが、若い人も見てるんですよね。

三平:それが「笑点」のすごさだと思います。今の最先端のお笑い、吉本の若手芸人のライブも行くけど、「笑点」も見てるという人、多いみたいです。

林:ところで、立川談志さんを「笑点」の司会に推薦したのは、お父さまだったってほんとですか。

三平:「笑点」の前身は「金曜夜席」という若手の噺家が出る深夜の人気番組で、談志師匠はそこで司会をされてたんです。テレビを見る人が少ない日曜日の夕方にその番組をもってこようとなって、親父は当時の番組プロデューサーから相談されたらしいです。プロデューサーやスタッフがこの家に集まって新しい番組名を考えたんですが、その当時「氷点」というドラマがあって……。

林:ああ、三浦綾子さんの。

三平:あれに引っかけて「笑点」にしようとしたらしくて。

林:えっ。「笑点」ってそこからなんですね。初めて知りました。じゃあ、ここが「笑点」の名前の発祥の地ですね。

三平:なのになぜ親父は「笑点」のメンバーじゃなかったのかというと、「俺は個人プレーの噺家で、チームワークは苦手だ。チームワークができる噺家を集めたほうがいい」と言ったそうなんです。

林:談志さんなんてもっとできなさそうだけど(笑)。

三平:だから司会者なんです。「何言ってんだよ」と突っ込んで、その言い合いがきっとおもしろくなる。親父は「俺の代わりにこん平を出してやってくれ」と言って、(林家)こん平師匠が第1回からのメンバーに入ったんです。僕もそういう番組のメンバーになったので、今まで以上に落語に向き合っていかなきゃと思いますね。

週刊朝日 2016年7月29日号より抜粋