養鶏協は農水省の「鶏卵生産者経営安定対策事業」の補助金を得ており、少なくとも2011年度から毎年約52億円の交付を受けている。つまり栗木氏は、「法律違反」と思われても仕方がない行為を、理事会の場で自ら「自供」したのだ。

 さらに出席していた理事たちから激しい反発を受けたのは、次の言葉だった。

「栗木会長は、議員に渡したカネを自腹で立て替えていると説明し、『80万円のうち、20万円は私が出します。残りの60万円を理事のみなさんでご負担をしてもらえませんか』と言うのです。養鶏協が政治家に現金を手渡したら、下手をしたら贈収賄ですよ。相談もなく栗木会長の独断ですが、ヤバいんじゃないかと危惧する声が次々とあがりました」(前出の理事)

 ところが、栗木氏はそれらを無視。「自民党の国会議員にはお世話になるから」と、政界工作ともみられる資金の提供を重ねて要請したという。

 その日の理事会には、理事などの役員が15~20人、事務方も10人ほど出席し、計30人ほどが栗木氏の発言を聞いていた。
 栗木氏はその後も、親しい関係者に政治家の実名をあげ、「あっさり受け取ってくれた」と話したという。
「TPPで鶏卵・鶏肉の関税が撤廃されることになったので、業界全体に先行き不安があるのはたしか。だからといって、何で政治家に現金なんか渡すのかと思いましたよ。栗木会長はもともと政治好きで、亡くなった松岡利勝元農水相を熱心に支援していた。松岡氏との写真を見せてもらったことがある」(同)
 たしかに、栗木氏は松岡氏の政治資金管理団体に、05年と06年に年間12万円、計24万円を寄付している。だが、今回は個人ではなく、養鶏協の会長として政治家と面会し、しかも手渡した現金の負担を理事に求めたことから「個人的な支援」ではないことは明らかだ。
 しかも、栗木氏はTPPハワイ会合には、畜産業界の代表者が集まった「畜産ネットワーク」の一員として参加していて、酪農や牛・豚の畜産関係者も一緒だった。栗木氏の理事会での言葉は、広く知れ渡ることになり、進退問題にまで発展した。
「栗木会長と都丸副会長は説明しませんでしたけど、総会に参加した人の多くは現金授受の責任をとったんだと思っていますよ」(総会の参加者)

 それでは、養鶏協から現金を受け取った自民党の政治家とは誰なのか──。

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