「古典作品のよさって、“覚えられないこと”にあるんじゃない?」
2003年から、おおよそ年に1本のペースで舞台作品に出演している鈴木砂羽さんが、今年出演を決めたのが、野村萬斎さん構成・演出の「マクベス」である。能・狂言のミニマルな演出方法を取り入れたこの作品が上演されるのは10年以来4度目だが、鈴木さんの出演は初。「シェイクスピアには全く精通していない」とあっけらかんと言ってのける鈴木さんは、子供のような素直さと鋭さで、冒頭の発言につないだ。
「文学座の研究生時代、シェイクスピア作品を素材にしてエチュードをやったことはあるけれど、ちゃんとした舞台を観たことはない気がする(苦笑)。たとえ観ていたとしても、細かいところまでは覚えてないでしょうね。でも私は今回、萬斎さんのマクベスだからやりたいと思ったんです。演出家と役者の組み合わせによって作品の印象もどんどん変わる。だから、古典っていうのは繰り返し上演されるんですよ、きっと」
台本を読んで、そのとき感じたものを表現すればいい。シェイクスピアだから大変なことが多いわけじゃなく、大変なことは、そのつどそのつど生まれるものだと思っている。だから、あまり“準備”や“勉強”にはとらわれないのだという。
「年齢なりのしたいこと、考えや生き方を、俳優という仕事は突きつけられる。だから常にいろんなことを考えてはいます。でも、私はこれまで、やりたいことが枯渇したことがない。むしろ年齢を重ねるにつれて、表現したいものが太く育っていく。大人になってからのほうが、どんどん自由になっている感じはあります」
とはいえ、30代前半から半ばにかけては、やりたい仕事に出会えず、悶々としていた時期もあった。