極めつきは安倍首相がアベノミクスの成果として誇った円安や株高だ。企業業績が改善し、投資や雇用、賃金への波及を狙ったものだが、
the linkage between corporate earnings and corporate investment has always been weak.
(企業が儲ければ投資が増えるとする点については企業の収益と企業の投資との連関はもともと弱い)
需要こそ最重要だと主張し、あれ? これではアベノミクスの前提に駄目を押されたも同然ではないか。
会の途中では、安倍首相自ら「オフレコで」と発言する場面があるほか、司会者は終了時に「総理の発言は機密です」と念を押している。
会合の参加者はクルーグマン氏だけではない。ほかにも米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授や米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授ら世界的な権威を呼び寄せているのだ。こちらは残念ながら議事録は「公開」されていないが、会合用資料がある。内容は政策や現状認識に対するダメ出しのオンパレードなのだが、報道では消費増税関連しか目立っていない。無理もない。
非公開の会合直後に事務局側が実施した報道陣への説明では、重要項目を省いていたり、2日後に出てきた和訳が官僚が意図的に歪曲した「霞が関文学」だったりと、たちが悪いのだ。
田代氏によると、例えばスティグリッツ氏の英文資料では、今年秋にある米大統領選の候補者全員が反対し、米連邦議会承認という関門もある環太平洋経済連携協定(TPP)もぶった切る。“objectionable”(いかがわしい)という強い単語を用いて「悪い貿易協定。投資条項は特にいかがわしい」と切り捨てているのだ。対外直接投資の円滑化についても、スティグリッツ氏は「雇用を減らす」と一刀両断。
With G-7 exporting capital intensive goods, importing labor intensive goods, a “balanced”increase in trade leads to lower employment
▼事務局訳<G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入するという「バランスの取れた」貿易取引の増加は、雇用を減少させる>
ところが、スティグリッツ氏の会合終了後、記者に対して事務局側が実施した説明の中では、なぜかTPPには触れずじまい。不可解だ。前出の田代氏は言う。