介護を苦にした家族による殺人事件、介護職員による高齢者への相次ぐ暴行事件――。
いっそのこと、人間よりもロボットのほうが頼りになるのでは? シニアが本当に使える“介護ロボット”を探った。
兵庫県宝塚市に住む佐武博司さん(81)は、4年前に転倒して脊髄損傷で両手両足が麻痺状態になった。毎日リハビリに取り組み、車いすで移動できるようになったが、自力で歩くのはまだ難しい。
その佐武さんの最近の日課は“散歩”だ。歩行支援ロボットのおかげで歩くことができるようになったのだ。手押し車のように押しながら歩くが、ロボットが歩みのスピードを自動で調節してくれる。
「車いすと違って、立ち上がって姿勢よく歩けるんですよ。やっと歩けるようになって気持ちが前向きになりますね。周りの人たちにも、表情が生き生きとしていると言われます」
と佐武さんは顔をほころばす。船井電機発のロボットベンチャー、RT.ワークス(大阪市)が昨年夏に「ロボットアシストウォーカーRT.1」を発売すると、リハビリのためにとすぐに購入した。
「ほかのリハビリ機器と違って自力で歩いているような感覚があるんです。今は自宅の庭や最寄りの宝塚駅までの坂道を歩いています」
坂道では自動でスピードを調整して、歩行をサポートしてくれるので、自力で歩くのが難しい佐武さんでも安心してリハビリに励める。GPSと通信機能が内蔵されているので、自宅から家族が見守ることもできる上、歩いた距離や歩数が毎日メールで自動的に送られてくる。
「どれだけ歩いたのか数字でわかるので、リハビリ効果が見えやすく、とても励みになります」と佐武さん。今年2月にはロボットと一緒にハワイ旅行にも行った。