「これまでなかった壁があり、各店舗に流し台の設置も義務づけられる。壁にも柱や造作物などの影響で凹凸がある。数字上の面積が広くなったとしても、実用面ではとても狭くなったというのが実感です」
にぎにぎとした市場の雰囲気も、がらっと変わってしまうのか。取材した卸売業者たちは「壁はいらない」と口をそろえるが、都の福祉保健局に問い合わせると、
「食品衛生法にある営業許可のための基準に、『使用目的に応じて区画をしなければならない』とあり、法的に必要です」
とのこと。「築地市場の店舗には壁がありませんが」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「壁はあるはずですが……。もしないとすれば、築地市場の開設が1935年で、47年に食品衛生法が制定される前だったからかもしれません」
確かに法律ではそういう決まりなのかもしれないが、実際に市場で働く業者が悲鳴を上げている現実に、運用面で折り合いをつけられないものか。
渡部氏の娘で中央区議の渡部恵子氏がこう語った。
「『卸売市場法』10条には市場の認可の条件に『適切な場所に開設され、かつ、相当の規模の施設を有するものであること』とあります。包丁も引けない施設が『相当の規模』とはとても言えない。今や築地の魚はアジア各国にも輸出され、『日本の台所』から『世界の台所』になっている。これだけ使い勝手の悪い施設をつくって、その機能が維持できるのでしょうか」
※週刊朝日 2016年3月11日号より抜粋