今の政界で最も有名な世襲政治家といえば、昨年10月に34歳の若さで自民党の農林部会長に就任した4代目政治家の小泉進次郎衆院議員だろう。
自民党幹部は「進次郎のおかげで助かっている。補佐役のベテランの西川公也(元農水相)の助言もよく聞き、コンビもまずまず」と褒める。しかし、農業関係者からはブーイングの声が出始めている。
進次郎氏は総資産100兆円という農林中央金庫を突然、やり玉にあげた。
「融資のうち農業に回っている金額は0.1%しかない。農家のためにならないのならいらない」(1月)
農林中金は、地域のJAバンクや各都道府県にあるJA信連から資金を預かり、その運用益を組合員に還元している。これは、中小企業向けの融資をしている信用金庫が、その資金を運用する信金中央金庫を持つのと同じだ。経済評論家の三橋貴明氏は言う。
「農協の主な業務には、農産物の販売や農業経営に必要な資材を提供する経済事業と、保険や金融を担う信用・共済事業があります。経済事業は赤字で、金融サービスの黒字で穴埋めしている。金融を切り離す規制改革をすれば、農協マネーを狙う米国、企業、投資家は喜ぶでしょう。しかし、農業資材は値上がりし、特に赤字事業の多い地方のガソリンスタンドや金融業務は閉鎖せざるをえない。結局は、地方に住む人々が打撃を受けることになる」
これだけではない。政府の規制改革会議は、一般企業による農地売買自由化を繰り返し提言している。これについても進次郎氏は、経済誌「エコノミスト」のインタビューで、「選択肢のひとつとして持っていい」(2月2日号)と、前向きな発言をしている。
この発言にも自民党のベテラン議員が反発している。