06年に、骨髄腫細胞をピンポイントで狙いその増殖を抑える「分子標的薬」のボルテゾミブが登場。その後、かつて妊婦への薬害を起こしたサリドマイドが、多発性骨髄腫に効果があるものとして09年に再発売された。加えて、サリドマイドの進化版といえるレナリドミドが10年に発売され、この三つは「新三薬」と呼ばれた。以来、患者の余命は7~10年と大きく延びてきている。

 さらに15年には、ポマリドミド、パノビノスタットなど、それまでとは違うメカニズムでがんを抑える新薬が発売された。病気の初期の治療に使えるよう認められていたのは、「新三薬」以降はボルテゾミブだけだったが、15年末にはレナリドミドも加わった。

「レナリドミドを初期治療に使えるようになったので、今後は『VRD療法』を初期から実施できるようになります」(鈴木医師)

 VRD療法とは、レナリドミドを含めた3種の薬を併用して治療するもの。米国では初期の治療に効果を上げていたが、日本では再発や治療の難しい患者にのみおこなわれていた。

「米国では最新の薬を3剤併用して集中的に治療することで、2~3割の患者さんの完治が期待できるようになりました。日本でも今後は延命ではなく、完治が治療の目標になっていくと考えられます」(同)

 16年は、ボルテゾミブの効果を強めた分子標的薬、カルフィルゾミブの発売も予定されている。さらに17年にはボルテゾミブの飲み薬版となるイキサゾミブも登場する予定だ。その後も、現在臨床試験中の新しい分子標的薬や、抗体医薬と呼ばれる薬など続々と発売されるとみられる。

週刊朝日  2016年1月22日号より抜粋

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