北朝鮮と親交の深い、第三国の諜報機関員(複数)をカネで抱き込む。彼らは、長年にわたり北朝鮮に駐在したか往来してきた者たちだ。その機関員たちが目にかなう北朝鮮の諜報機関員をカネで抱き込み、被害者を脱北させる――。全員救出まですべては秘密裏に行う。

 北朝鮮は当然そういうことに神経を尖らしているだろうが、わかった上での行動だ。

 以上のように考えていくと、現時点で日本という国は、結局、話し合いで解決するしか道はないことになる。その場合、私は、拉致被害者以外の行方不明日本人や日本人妻の里帰りなどについても、同時並行で前へ進めるべきだと考える。もちろん、国の不作為のために泣いている人たちに人道上の優劣はない。ただし、見返りの経済援助はせず、必要経費のみ支払う。

 様々なパイプでやり取りをすることで拉致被害者につながる真正情報が入ってくる可能性が出てくる。

 北朝鮮の幹部たちは、「いつ自分が粛清されるかわからない」という疑心暗鬼が強くなり秩序基盤はどんどん緩んでいるからだ。

 同時並行で進めると、拉致被害者の生存者まで死んでいると騙されるのではと指摘する声がある。徹底したDNA鑑定や歯型確認など科学的主義を貫く。空白の時間を費やすよりは、慎重かつ毅然とそうした行動への戦術を固めてほしいと願う。

(ジャーナリスト・石高健次)

週刊朝日  2015年12月18日号より抜粋

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