自衛隊の広報施設に置かれた対戦車ヘリ「AH―1S」(撮影/牧野めぐみ)
自衛隊の広報施設に置かれた対戦車ヘリ「AH―1S」(撮影/牧野めぐみ)
この記事の写真をすべて見る

 将来、現場部隊の中心的役割を担う一般曹候補生の応募者数は、今年度2万5092人で昨年度より約2割減少。2007年に現在の採用区分になって以降、ピークだった11年度から半減している。大卒者を対象とする一般幹部候補生の応募者数も、7334人で昨年度比13.8%減。15年3月の防衛大学校卒業生の任官拒否者は25人で、過去10年間で3番目に多い数字となった。

 自衛隊員の家族でつくる団体「自衛隊父兄会」の佐賀県副会長の古里昭彦さんがこう語る。

「応募者の減少は、安保法制の影響が大きいと思います。特に母親たちはみんな、息子を戦地に送りたくないと心底願っています。自衛隊は国境警備隊であり、災害救助隊であると思っています。国を守るのが任務であり、海外で武力行使する軍隊ではないはずです。そういう事態にならないよう外交努力するのが、政治家の役目ではないですか」

 応募者減少に危機感を募らせた防衛省は、なりふり構わないリクルート作戦を展開している。

 自衛官の募集業務を行うのは、各都道府県に置かれた自衛隊地方協力本部(地本)だ。市町村に対して、自衛官適齢者の名簿提供の要請を強めている。地本の求めに応じて、市町村が住民基本台帳をもとに18~27歳未満の氏名、住所、性別、生年月日といった個人情報を名簿にして提供するケースが目立っている。また、名簿提供には応じず、住基台帳の閲覧のみ許可している自治体もある。地本は、こうして住基台帳から得た情報を利用し、「自衛官募集」の案内封書を送付しているのだ。

 防衛省人材育成課の資料をもとに阿部知子衆議院議員が調査した結果を見ると「名簿の提供」が13年度565件だったのが、14年度634件と69件も増加している。一方で「名簿提供も住基台帳閲覧もなし」も大幅に増えている。阿部氏は次のように分析している。

次のページ