各所で銃声や爆発音が轟き、阿鼻叫喚の大惨事となったフランス・パリの同時多発テロ。日本時間11月14日午後、フランスのオランド大統領が「イスラム国(IS)による戦争行為」と発表し、その後、IS側が“犯行声明”を出したが、イスラム過激派とみられる犯行の主体はどの組織なのか。なぜパリが標的になるのか。
レバノン・ベイルート滞在中の中東ジャーナリスト、川上泰徳さんは、発生直後に犯行声明が出なかった点から「厳密に言えば、ISの犯行ではない」と指摘する。
今回のテロの2日前にベイルートで起きた自爆テロでは、発生の2~3時間後にIS系のサイトに犯行声明がアップされた。10月末にエジプトでロシア民間機が墜落した際も犯行声明は数時間のうちに出た。
こうした点から、「ISはすぐに犯行声明を出す。今回は声明が遅く、テレビを見て作文したような内容。『喜ばしい攻撃についての声明』や『敬虔なるグループが行った』といった文言があることから、事件を後から“追認”し、“祝福”しているようにも読める」と指摘。そのうえで、こんな見方を示した。
「ISとは組織的に別で、フランスの対イスラム教徒対策に不満を持つ国内の武装過激派組織による犯行とみるべきだ」
実際、1月に週刊新聞社を襲撃したテロは、ISのシンパではあるが、直接的なつながりのない、仏国籍のイスラム過激派による犯行だった。中東現代史が専門の臼杵陽・日本女子大学教授もこう話す。
「今のISは世界各地にシンパを作ろうとする動きが活発。フランス国内のシンパがISに共鳴して犯行に及んだ可能性はある」
ジャーナリストの黒井文太郎氏も、フランス国内の過激派組織の犯行である可能性についてこう話す。