
最新情報と完全無欠のエレクトリック・マイルスの頂点
Live In Paris 1971 Early Show (One And One)
今回も最新情報のお知らせからです。今月下旬あるいは来月上旬には、ワーナー時代の音源で構成された5枚組『ザ・ワーナー・イヤーズ』が発売されます。少数ながらも未発表曲が含まれ、またマイルスが友情参加したセッションがまとめられているのも助かります。このセットも先の『ツツ・デラックス・エディション』と同じく国内盤としても出ますが、原文解説の翻訳が封入されます。今回は不肖ナカヤマが監修させていただきました。じつに日本語にして2万字を超える大作となっています。翻訳が読みたいという方には、国内盤をお薦めします。
さらに新刊が刊行されます。予定では今月末となっていますが、今回は『黒と白のジャズ史』(平凡社)という書き下ろし単行本になります。マイルス本ではありませんが、随所に関連事項が登場します。この本もぜひご一読ください。以下に目次を掲載させていただきます。
▼第1章 ジャズ・エイジの物語
ジャズが記録された瞬間/ベルリンの少年/理想と現実と100枚のSP/ジャズ・エイジの物語/
公爵(デューク)と王(キング)
▼第2章 フロム・スピリチュアル・トゥ・スウィング
シング・シング・シング/白いジャズ論壇/フロム・スピリチュアル・トゥ・スウィング/
1939年1月6日/先駆としてのコモドア・ミュージック・ショップ/ブルーノートの誕生
▼第3章 戦争とサマータイム
ゲシュタポからの逃亡/サマータイム/戦争の余波
▼第4章 黒いジャズの夜明け
ジャズ正史と現実/黒いジャズの夜明け/
ジャック・ケルアック「1947年、バップはアメリカ中で荒れ狂っていた」/
ブルーノートのビバップ学習期
▼第5章 ブルーノート・ビバップの誕生
スウィングとビバップの断層/ブルーノート・ビバップの誕生/セロニアス・モンクの発見/
ブルーノート哲学/出口なき暗黒の時代
▼第6章 ハードバップの時代
LPが牽引する新展開/10インチ盤から12インチ盤へ/白い西、黒い東/ハードバップ製造工場/
歴史が生まれた夜
▼第7章 黒いジャズの使者たち
新たな黒人群像/2人の使者/ジャズ・メッセンジャーズ/黒いサウンド
▼第8章 アルフレッド・ライオン最後の時代
「君たちはミュージシャンに印税を払っているのか?」/レコード店にとってのブルーノートの意味/
ビートルズとロックの後遺症/アルフレッド・ライオン最後の時代
▼第9章 ストリート・ミュージックとしてのジャズの時代
流転する70年代ジャズ/「黒人を雇用せよ!」/ジャズのストリート・ミュージック化/ブラックバード
▼第10章 ジャズ史上最も美しい夜
歴史はくり返す/80年代ジャズの勃興/選ばれた白いメッセンジャー/ジャズ史上最も美しい夜
▼第11章 越境するジャズ
終焉か再生か/時代の追い風/越境するジャズ
さて今週もご紹介が遅れましたが、この音源もまた最新のソースをもとにつくられたヴァージョンアップの1枚になります。これまでピットを含め不完全だった部分も修正され、音質も向上したという、おそらくこれが最上のヴァージョンでしょう。
こうしたキース・ジャレット時代のライヴを聴いて痛感するのは、公式盤『セラー・ドア』ボックス・セットの音質があまりにもきれいに洗浄され、肝心の危険な匂いが霧消してしまったこと。ほんとにあのボックス・セットはもったいないことをしたと思う。
少々耳にキンキンきますが、これがキース時代のマイルス・バンドの生身の音というものなのでしょう。マイルスがワウ・ワウ・ペダルを踏みしめ、ゲイリー・バーツが雄叫びを上げ、キースが奇声を発しながらのたうち回るという理想的な光景が眼前でくり広げられる。エレクトリック・マイルスといえば、とかく73年と75年に話題が集中しがちだが、キース時代もまた圧倒的かつ完全無欠のエレクトリック・マイルスの頂点だったと強く思う。それではまた来週。
【収録曲一覧】
1. Directions
2. Honky Tonk
3. What I Say
4. Sanctuary
5. It's About That Time
6. Yesternow
7. Funky Tonk
8. Sanctuary
(2 cd)
Miles Davis (tp) Gary Bartz (ss, as) Keith Jarrett (elp, org) Michael Henderson (elb) Ndugu Leon Chancler (ds) Don Alias (per) Mtume (per)
1971/10/27 (Paris)