ザ・ラスト・セクステット・イン・ルクセンブルク1991
ザ・ラスト・セクステット・イン・ルクセンブルク1991
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進化・深化するフォーリーを捉えたライヴ
The Last Sextet In Luxembourg 1991 (Cool Jazz)

 今年もよろしくお願いします。早速で恐縮ですが、拙著の宣伝からいかせていただきます。前回お知らせした『かんちがい音楽評論ジャズ編』(彩流社)の店頭に並ぶ日が今月の15日前後と決まりました。全国的には18日になるかと思います。さて大西順子さん、菊地成孔さん、山中千尋さんをはじめ「かんちがい」の対象とさせていただいた方々からどのような怒りの反撃がくるか、あるいはまったくこないのか。その後の動きに関しては、改めてご報告したいと思います。

 さて新春の1発目は、ラスト・セクステットによる1991年7月26日、ルクセンブルクでのライヴ。モノの本によれば、「正式にはルクセンブルク大公国。西ヨーロッパに位置する立憲君主制国家。首都はルクセンブルク市。隣接国は、南のフランス、西と北のベルギー、東のドイツである。ベルギー、オランダと併せてベネルクスと呼ばれる小国のひとつ」とあります。うーん、今年もブートには勉強させてもらいます。

 ラスト・セクステットに関してはすでに何度も指摘していますが、パーカッションを排除した編成はじつに潔く、加えてマイルス的でもあり、メンバー構成ともども最高のフォーマットであったように思います。そもそもキーボードがダブルというのはトゥー・マッチだったし(効果的な場面も多々あったとはいえ)、満足に叩けないエリン・デイヴィスを息子というだけでパーカッションに起用するほうがおかしかった。そのことにようやく気づいたのが、このセクステットというわけです。しかしその時点でマイルスには残された時間に限りがあり、ついに「作品」としてまとまったものを生み出すには至らなかった。そこが痛恨事であり、また大いなる損失でもあると考えるしだいです。マイルスの人生は、まるで誰かが事前に書いたようにうまくいきましたが、最後の最後はやはり運命に翻弄されて終わったようにも感じます。

 1曲目が《パーフェクト・ウェイ》というのが一般的には魅力薄の問題点ではありますが、ラスト・セクステットによるヴァージョンはさほど「笑い」もなく、凛々しく引きしまっています。ここがラスト・セクステットの特質でしょう。総体的には、フォーリーの進化も特徴のひとつに挙げられます。もともと進化もへったくれもないといわれればそれまでなのですが、思うにフォーリー、どんどん深い次元に向かって突き進んでいったようなのです。このライヴでは、フォーリーの新生ぶりも大きな聴きどころとなっています。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 Perfect Way
2 Star People
3 Hannibal
4 The Senate / Me And You
5 Human Nature
6 Time After Time
7 Penetration
8 Untitled Tune
(2 cd)

Miles Davis (tp) Kenny Garrett (as) Foley (lead b) Deron Johnson (key) Richard Patterson (elb) Ricky Wellman (ds)

1991/7/26 (Luxembourg)