「内容だけでなく手続きにも問題があります。確立した政府見解を現政府が自由に変更できるという主張は、契約者には契約を破る自由があるという主張と同じ。政治社会や契約社会を支える高次のルールを壊してしまう。高次のルールを力で破るのは、非立憲的な専制権力。過去の政府に対して、現政府が法秩序の連続性を破壊するのは、クーデターそのもの。これを押し戻せるか。立憲的権力か非立憲的権力かの瀬戸際です」
それに対して多くの市民らがノーを突きつけ、抗議行動を始めた。
国会前で毎週金曜夜に抗議集会を行っている学生団体「SEALDs(シールズ)」は、ドラムのリズムに合わせてマイクを握って叫ぶ。
「民主主義ってなんだ?」「立憲主義ってなんだ?」
28日の集会に参加した男子大学生(21)は「フォローしているミュージシャンのツイートでシールズを知って今日はじめて来てみた。民主主義? これまで考えたことがなかったけれど、いま考えています」と言う。
石川教授は言う。
「安倍首相を支える選挙独裁的民主主義観に対し、権力の統制や自由の保障といった立憲主義への配慮がなければ、良き民主主義でないというのが立憲民主主義。抗議行動側の考え方はそれに限りませんが、現政権の民主主義にノーを突きつける点で共通しています」
この国の民主主義のあり方が問われている。
(本誌・長倉克枝)
※週刊朝日 2015年9月11日号より抜粋