こうした方針に基づいた訓練が、急ピッチで行われているとも考えられる。
自衛隊の活動の範囲は、陸上でも拡大する。内部資料では、南スーダンでの国連PKOに参加する自衛隊員が、安保法制で新たに認められる「駆けつけ警護」を行う可能性が示唆されていたのだ。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が語る。
「『駆けつけ警護』を行えば戦闘に巻き込まれるのは避けられず、自衛隊員に犠牲が出る可能性が高い。ただ、もっと危ういのは日本の特殊作戦群が米軍の特殊部隊と連携をして秘密活動をすること。米特殊部隊の行動は要人の殺害や反政府勢力の支援など、非合法なものが多い。もしそれが露見すれば、日本政府は窮地に立つことになる」
自衛隊の内部資料の記述に共通するのは、大国同士の全面戦争のような事態より、警戒監視や駆けつけ警護など「平時」の活動の検討に重きが置かれていることだ。共産党の小池晃参院議員がこう語った。
「(武力行使の)『新3要件』を満たす『存立危機事態』のようなことが実際に起きる可能性は限りなく低い。安保法制が成立した後で実際に起きるのは、中東やアフリカでの駆けつけ警護のようなシチュエーションで、自衛隊員が犠牲になったり、誰かを殺害してしまう事態でしょう。集団的自衛権の行使を認めることが突破口になり、海外での武力行使に歯止めが利かなくなってしまうのです」
隠されていた安保法制の真の目的がようやく国民の目に見え始めた。
折しも北朝鮮の金正恩第1書記が8月21日、各前線部隊が完全武装する「準戦時状態」を宣言する命令を出したとされ、朝鮮半島の緊張が高まっている。安保法制成立後、自衛隊は米軍とともにどこへ行くのだろうか。
(本誌・小泉耕平)
※週刊朝日 2015年9月4日号より抜粋