アントニオ・カルロス・ジョビン/リオ・リヴィジテッド
アントニオ・カルロス・ジョビン/リオ・リヴィジテッド
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 いつもコルトレーンとか聴いてキンチョウしているので、わたしが鼻歌を歌うなんてことは滅多にないのだが、いつからか温泉につかるとフッと口をついて鼻歌が出ることに気がついた。出てくるのはジャズではなく、決まってボサノヴァの曲。

 一度や二度のことなら、「たまに旅行に行って機嫌がよかったのだろう」といって終わるのだけれども、同じことが3回も4回も続くと、これは「温泉とボサノヴァは何らかの関係があるのではないか?」と思いたくなってくる。

 最初に「あっ、歌ってるな」と自覚したのが、たしか五年前。兵庫県城崎温泉で、アントニオ・カルロス・ジョビンの「おいしい水」を口ずさんでいた。「おいしい水」=「いいお湯」ということなのだろうか。

 その一年後、金沢の露天風呂で、「彼女はカリオカ」。ちょうど併設されていたプールに、なぜかブラジル系の若い男女が大勢来ており、頭が小さくてすらりとしたビキニ美女もたくさんいた。

 日本のカップルはイチャイチャしているのに、なぜか彼等ブラジリアンは、男性は男性、女性は女性のグループにわかれて、恥ずかしそうに遊んでいたのが印象的だった。ちなみに「カリオカ」とは、「リオデジャネイロ市の地元民」という意味だ。

 お次は福井県あわら温泉。ジョビンの曲だけかと思ったら今度はマルコス・ヴァーリの「サマー・サンバ」が出てきた。

 ボサノヴァの名曲は、リズミカルな部分とコブシのきいたサビが交互に出てくるから、そこが温泉でひとくさりするのにぴったりなのだ。この曲でいえば、「So Nice~」のくだり。いくらジャズやブルースが好きでも、温泉で歌うのはしっくりこない。コブシがまわらないのだ、コブシが。

 さて、三度までなら胸のうちにしまっておいたのだが、今年行った鳥取県皆生温泉でも歌ってしまったので、「これはジャズストリートに書きなさいという天のお告げだな」と思い、こうしてせっせと書いている次第。

 毎回別の曲を無意識に口ずさんでいるのがなんとも不思議なのだが、今回は名曲中の名曲「お湯があふれて」いや、違った「想いあふれて(ノー・モア・ブルース)」。

 省かれることも多いのだが、この曲には有名なイントロと秀逸な間奏があって、ちゃんとイントロから「パーヤバヤバヤバッパー」と歌ってる自分に笑ってしまった。

「想いあふれて」の名演数あれど、ちゃんとイントロから収録されているトラックとして、御大アントニオ・カルロス・ジョビンのライブ盤『リオ・リヴィジテッド』の同曲をお勧めしよう。大御所ガル・コスタをゲストに迎え、一枚で二度おいしい。

 で、結局、温泉とボサノヴァにどのような関連性があるのかと申しますと、温泉街のあのユル~イ感じがボサノヴァに合う。と、それくらいしか調べはついておりません。いつもキンチョウしているので、たまの休暇にはリラックスしたいという願望の顕われでしょうか。

 iPodにボサノヴァをいっぱいに詰め込んで、また来年も温泉に出かけよう。

【収録曲一覧】
1. One Note Samba
2. Desafinado
3. Agua De Beber
4. Dindi
5. Wave
6. Chega De Soudade ( No More Blues)
7. Two Kites
8. Samba Do Soho
9. Sabia
10. Samba Do Aviao ( Song Of The Jet)
11. Aguas De Marco ( Waters Of March)
12. Corcovado