作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、国会中継を見ていて、こんなことを思ったという。

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 国会中継をみているとオジサンばかりで、この職場で女や若者が働くのは、どんなにストレスだろうと想像するだけで胃が痛い。女が増えれば平和が訪れる!とは思ってないけど、オジサンが9割占める国会では、日本そのものがオジサン色に染まっていくのではないかと、心配だ。

 オジサン色の特徴を一言で言うと、「縄張り」が好き過ぎる! これに尽きる。

“戦争法案”に反対する集会に、共産党の志位さんと共に参加した維新の党の議員が厳重注意を受けた。「維新が共産と組むのはおかしい」ということらしい。重大な法案の前に個人がどう考えるかよりも、縄張りの中でどう考えるかが優先される、典型的なオジサン発想だ。

 そんな縄張りからの声に耳を澄まし続けると、世間の声が耳に入らなくなるのだろう。

「沖縄の二つの新聞は潰さないといけない」と、作家の百田尚樹氏が自民党の議員の勉強会で語ったことが話題になったけど、そもそも百田氏は沖縄の新聞をしっかり読んだことはないと、その後のインタビューに答えて語っていた。「記事の印象から私が嫌いな新聞だ」と。これこそ、都合の良いように解釈したがるオジサンの末期症状だ。

 
 私ごとだけど、先日かさばる荷物を持ってヨロヨロ歩いていたら、前方から来た50代のオジサンが私の肩をドンとどついてきた。「道路交通法知ってるか? 邪魔だ!」。

 小さい百田は、全国あちこち。オレこそが法律! という調子で道の真ん中を歩きたがるので、怖いです。

 ちなみに「縄張り」とは、「正当な権原がないにもかかわらず自己の権益の対象範囲として設定していると認められる区域をいう」と、法律(暴力団を取り締まる法律です)で、これ以上ない明快な定義がされていました。それ読んで、私、深々と納得した。

 例えば時々、「早く結婚しろ!」と議会でヤジってしまったり、「女は産む機械」(懐かしいですね)と口を滑らしたりするセクハラがなぜなくならないかといえば、オジサンにとって、女の性そのものが、自己権益対象範囲だからなんだよね。自分のものなのだから、口を出してもいい、管理していい、時には手を出してもいいものと、ゆるーく考えてるのね。

 そんな縄張り意識の強いオジサンは、仲間だと思っていた知的なオジサンに裏切られるとパニクるようです。

 例えば味方してくれるはずの憲法学者に間違いを指摘されると、大パニック。オジサン政治はオジサンが信頼してる「オジサンの仮面」をつけた男性に裏切ってもらうのが、効率良い倒し方なのかも。

 でもね、オジサンは本当は、女がとても怖い。なぜなら「縄張り」を理解しない女が多いから。だから女を過剰にたたいて潰そうとする。そして結果、オジサンがオジサンを育てオジサン色が深まる……。

 断ち切りましょう、この輪廻(りんね)。

週刊朝日 2015年7月17日号