「髄芽腫は一般的に化学療法に対する反応がよく、手術後に強力な化学療法をおこないます。脳内や脊髄に散らばりやすい性質のため、脳と脊髄への放射線照射も必要です」(井原医師)
あかねさんの場合も、大量化学療法という強い化学療法とともに、放射線照射が1カ月半かけて30回実施された。大量化学療法は、三つの薬(シスプラチン+ビンクリスチン+シクロフォスファミド)を組み合わせて4週ごとにおこない、その後にそのつど強い治療に耐えるための造血幹細胞移植を実施する治療が4回繰り返された。
あかねさんは入院中、院内学級に通い治療に専念。約10カ月で病気を克服し退院した。退院後も、体力と免疫力が低下しているため感染症などに気をつけながら、現在は月に一度外来での経過観察と、3カ月に一度のMRI(磁気共鳴断層撮影)検査などを受け、元気に学校に通っている。
あかねさんのように、髄芽腫を患っても、治療によって学校生活に復帰して日常を過ごすことのできる場合もある。ただし、小児がんは再発しやすい。また、治療後10年以上経過してから、「晩期合併症」が現れることもある。これは、化学療法や放射線治療の後遺症として現れる副作用だ。小児に、患部だけでなく全脳照射、全脊髄照射と徹底的な放射線照射をおこなった場合、骨の成長障害による低身長や、脳へのダメージとして高次脳機能障害やてんかんなどが生じることがある。成人後の社会生活に支障をきたすことも多い。
「理想的には、治療の反応がよく比較的予後のいい患者さんに対しては、治療の強度を落としてできるだけ病気と晩期合併症の両方を克服するということを実現したいと考えています」(同)
治療以外にも、就学や就職を支援するようなシステムをきちんと整備することが重要だと井原医師は話す。
※週刊朝日 2015年7月3日号より抜粋