コンプリート・ウエンズデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチ・トラック・マスター
コンプリート・ウエンズデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチ・トラック・マスター

超ド級アイテム登場!究極のフィルモア・ライヴを絶対に聴け!!
Complete Wednesday Miles At Fillmore : Multi Track Master (So What)

 とんでもないブツが登場した!これぞマイルス・ブート史上最大の事件にして最高の音源発掘ではないか。あの驚愕の『メイキング・オブ・カインド・オブ・ブルー』をも凌ぐ最高傑作といっても過言ではないでしょう。マイルスのライヴ史上最高位にランクされる『マイルス・アット・フィルモア』全4日間の未編集音源がマルチ・トラック状態でCD化されたのです。これを驚異、驚愕といわずして今年の夏は越せません。

 少し冷静になって内容紹介に移りますが、栄光のソー・ホワット・レーベルから、現在までまったくの未発表に終わっていた「木曜日(サーズデイ・マイルス)」も含め、4日間の演奏が細大漏らさず、マルチ・トラックを最大限に生かした編集と構成で順次発売されるのです(感嘆符を100個つけたい!)。

 まずはその第1弾である「水曜日(ウエンズデイ・マイルス」が登場しました。そしてこの発売スタイルが、残る3日間にも踏襲、流用されることになります。そこで「水曜日」を例に概要をみてみましょう。

 発売される点数(種類)は、一曜日につき3種類になります。つまりは12種類という壮大なシリーズ。「水曜日」の場合は、今週ご紹介する『コンプリート・ウエンズデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター』が、いうなれば一般用。決定版と謳われた既発ソー・ホワット盤をも上回る最高クオリティによって、チューニングから最後の最後まで完全収録されています(パーカッションを片づける音まで!)。初心者は、まずはこれを聴くべきでしょう。

 次が、同作とオルタネイト・ヴァージョンを合わせて2枚組とした『コンプリート・ウエンズデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター&オルタネイト・ヴァージョン:デラックス・エディション』です。これは今後「デラックス・エディション」として親しまれていくのでしょう。なおジャケット・デザインがほとんど同じなので間違えないようにしてください。この2枚組には、よりライヴに近い状態でミックスダウンされたヴァージョンが追加されています。

 そして最後に控えているのが、マニアックな意味では今回最大の目玉となる、『コンプリート・ウエンズデイ・マイルス・アット・フィルモア:マルチトラック・マスター・セパレート・ヴァージョン』です。これも2枚組になります。これこそマルチ・トラック・テープが存在しているからこそ可能な作業で、各楽器ごとに解体し、どのような要素でこの驚異の音楽が成立しているのか、それを解き明かすことのできる最高のアイテムとなっています。

 以上、ごくカンタンにご紹介してきましたが、このコーナーでは順次詳しく内容を分析(というほどのものではありませんが)していきたいと思います。ともあれまずは、基本となるべき「水曜日」の完全版を聴き、圧倒されてください。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 Warming Up & Introduction by Bill Graham
2 Directions
3 The Mask
4 It's About That Time
5 Bitches Brew-The Theme
(1 cd)

Miles Davis (tp) Steve Grossman (ss, ts) Chick Corea (elp) Keith Jarrett (org) Dave Holland (b, elb) Jack DeJohnette (ds) Airto Moreira (per)

1970/6/17 (NY)