いまだ収束への道筋が見えない福島第一原発 (c)朝日新聞社 @@写禁
いまだ収束への道筋が見えない福島第一原発 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 4月27日に経済産業省が発表した電源別の発電コストの試算によると、原子力は30年時点で1キロワット時あたり10.1円以上。11年に出した前回試算の8.9円以上よりは増えたが、再生可能エネルギーや火力より安く、電源別では最安となった。

 原発事故の事故処理や、周辺住民への賠償などの費用は9.1兆円。原発のコストだけ「以上」と付いているのは、今後も賠償費用などが増えるためだ。ここにカラクリがある。立命館大学の大島堅一教授(環境経済学)は言う。

「福島第一原発の1~3号機は、水素爆発などで施設全体が放射能で汚染されています。仮にそのすべてを放射性廃棄物として処理すると、1~3号機だけで原発54基分に相当するとも言われています。今回の試算では、こういった将来の費用が計算に入っていません。廃炉作業や莫大(ばくだい)な量の廃棄物を処理する予算は計上されていないのです」

 原発が「トイレなきマンション」と呼ばれるのも、こういった放射性廃棄物を捨てる場所が確保できていないところにある。これは、事故を起こしていない原発であっても共通した課題だ。

 廃炉作業の工程はシンプルだ。最初に使用済み核燃料を原子炉から取り出す。この作業自体は通常の燃料交換作業と同じなので難しくないが、放射線量が極めて高く「高レベル放射性廃棄物」となる。

 次に、放射性物質による汚染度が低い設備から解体を始め、続いて原子炉本体の解体へと進む。この段階で出る放射性物質に汚染されたゴミが「低レベル放射性廃棄物」となる。汚染度の高いものから順にL1、L2、L3に分けられ、L1には原子炉内の構造物や制御棒などが含まれる。

 ただ、廃炉の工事自体は技術的な蓄積はできているという。1996年には、日本原子力研究所(当時、茨城県東海村)が国内初の動力試験炉(1.25万キロワット)の解体・撤去を終えている。その作業を指揮した原子力デコミッショニング研究会の石川迪夫(みちお)会長は言う。

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