旺盛な外国人観光客の需要を取り込もうと、外国人の嗜好や特性などに合わせた商品の開発が活発だ。
日本の食材の代表格である納豆。「ネバネバが気になる」との外国人の声を受け、茨城県の納豆業者は粘りを抑えた納豆「豆乃香(まめのか)」(216円~)を開発した。
「海外で売り出すために開発したのですが、販売を開始したところ、外国人の宿泊の多い国内のホテルやレストランからも問い合わせがきています」(納豆メーカー「金砂郷(かなさごう)食品」の広報)
と嬉しい悲鳴を上げる。
百貨店やホテルではこんな動きもある。中国人は体形が日本人より大きく、クオリティーの高い物を求める傾向がある。三越銀座店は今春、そんな意向に合わせた紳士服ブランド「ダーバン」のスーツ(7万9千~13万円)を発売した。
「昨年度に6万~8万円台のスーツを販売したら『もっと良いスーツはありませんか』とのお声をいただくことが多かったので、上質感をプラスしました。売れ筋は9万円台~13万円台でした」(三越伊勢丹ホールディングス広報)
新宿と多摩の京王プラザホテルでは昨年11月から、「ハローキティ」がお出迎えしてくれる客室(多摩1万5350円~、新宿2万3800円~)を設けている。
「キティは日本を代表するキャラクターで、海外からも人気が高い。特に、キティがTOKYOを満喫する休日をイメージしたポップな部屋『キティタウン』は海外の方に、プライベートルームをイメージした『プリンセスキティ』は日本の方に人気です」(同社広報)
ソファにベッド、床から壁まで客室一面がキティ、キティ、キティ! ファミリー層の利用はもちろん、女性へのサプライズにする男性もいる。連泊して両方に宿泊する人もいるそうだ。
既存の商品の販促に力を入れる企業もある。例えば、スパークリング清酒「澪」や日本酒「松竹梅」を販売する宝酒造は昨年、台湾の情報誌や京都のフリーペーパーでタイアップ広告を展開した。
「飛行機や日本国内のレストランなど、知っていただく場を増やしたい。日本で買って帰り、現地でまた購入するという流れを作り出したい」(同社広報)
と意気込む。
観光客の需要の取り込みは、今後の企業の成長を決める要素となる。
※週刊朝日 2015年5月8-15日号