オディアンズ・スリー/オディアン・ポープ
オディアンズ・スリー/オディアン・ポープ
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エンジン全開、米国ヴェテランの底力
Odean’s Three / Odean Pope (In + Out)

 アルバム・カヴァーを見て、すぐに2010年リリース(2008年録音)作『オディアンズ・リスト』を想起した。白地に毛筆のアルバム名と、サックスを持ったポープの服装が共通している。前作の充実ぶりを知るだけに、この連続性は期待を高めてくれたのだった。

 ただしアルバム・コンセプトは異なる。前作は3サックス+2トランペットの5管と3リズムのオクテットで、ポープ盤に参加経験があるジェームス・カーター(ts,bs)、ウィントン・マルサリス・グループのウォルター・ブランディング(ts)、晩年のフレディ・ハバードをサポートしたニュー・ジャズ・コンポーザーズ・オクテットのリーダーであるデヴィッド・ワイス(tp)、ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ等、ビッグバンドのファースト・コールの地位を固めるテレル・スタッフォード(tp)という強力なフロント。またドラムスにはポープとの初共演になったジェフ“テイン”ワッツが座り、演奏ばかりでなく第一線で活躍する主流派実力者たちをオーガナイズしたポープの手腕も浮き彫りにした。30年にわたる活動を誇るサキソフォン・クワイアとトリオが合体した編成が、キャリアの集大成的な色合いを帯びて、大きな収穫となったのである。

 本作は前作にも参加したリー・スミスと、昨年ECMでの初リーダー作をリリースして存在感をアピールしたヴェテラン、ビリー・ハートとのトリオ。前作で起用したピアノが抜きの編成は、82年の初リーダー作『オールモスト・ライク・ミー』とつながる(同作のベースはエレクトリックで、本作はアコースティック)。近年のポープは2008年にスミス+サニー・マレイとのトリオ作『プラント・ライフ』をリリースしており、ピアノレス・トリオでの音楽表現に関して、ポープは共演者を代えながら継続させてきたことが明らかだ。相違点があるとすれば、80年代はジャマラディーン・タクマ、ジェームス・ブラッド・ウルマー、ロナルド・シャノン・ジャクソンら“フリー・ファンク派”との動きとシンクロしていたことで、本作の編成は50年代後半のソニー・ロリンズを始祖とするモダン・ジャズの王道を継承したものと言える。

 無伴奏テナーで始まる#1で熱き思いを表明すると、スミスがベース・ソロでポープへの共感を示す#2、イマジネイティヴなテナー・ソロをハートが好助演する#3、コルトレーン由来のモーダルなテナー・サウンドを継承した#4、ポープの赤裸々さが前面に出た#6、パワフルさは30年前と変わってない印象の#7と、録音時73歳のポープは長年のファンも驚かせるほどのエンジン全開。実は本作がドイツのレーベルであることを含めて、米国ヴェテランの底力を再認識させられる1枚だ。()

【収録曲一覧】
1. Phrygian A’ Trois
2. Freash Breeze
3. The Garden Of Happiness
4. Good Question Two
5. Blues It
6. Blues For Eight
7. Almost Like Pt One
8. 12th Night
9. You And Me

オディアン・ポープ:Odean Pope(ts)
リー・スミス:Lee Smith(b)
ビリー・ハート:Billy Hart(ds)
2011年12月ペンシルバニア録音

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