「まず現地の銀行で日本国の信用を担保にドルを調達し、イスラム国に支払う。後日、日本の外交官から大使館行きの外交行李にドルを入れて送り、現地の銀行に返済する。外交官の荷物は、税関を通る必要がありませんから」
2億ドルは100ドル札で200万枚分。重さは約2トンにもなる。
一方、後藤さんが「誘拐保険」に加入していたという情報もあった。
「誘拐保険は日本の保険各社にはなく、欧米の十数社が扱っている。交渉人にかかる費用、身代金支払いなどをカバーするものがあります」(損保会社社員)
中東情勢に詳しい畑中美樹・インスペックス特別顧問によると、誘拐保険に入っている日本企業も少なくない。
「中東に駐在員がいるような大手の石油関連企業や商社が加入していますね。アフガニスタンなどの危険地域には、米英の保険会社が強いようです」
誘拐事件の身代金は10億円程度というが、「わからないことが多い」と、報道カメラマンの横田徹氏は言う。
「誘拐保険に入っていれば、まずは交渉人が動いてくれる。今回の2億ドルという莫大な身代金は、事前の交渉が決裂した結果では」
国際社会は揺さぶられっぱなしだ。
(本誌取材班=古田真梨子、上田耕司、福田雄一、永野原梨香)
※週刊朝日 2015年2月13日号