故・やしきたかじん氏の長女・Hさんがノンフィクション『殉愛』(幻冬舎)の内容に疑問を呈した本誌のインタビュー記事が波紋を広げている。執筆した百田尚樹氏はこう反論する。

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――さくら氏が相続で得る金額や金庫の中の現金の話などを『殉愛』に書かなかったのはなぜか。

「遺産の総額がなんぼとか、遺留分がどうこうとか、そんなことは書く必要がないと思った。それは作家としての判断でしょう」

――さくら氏は巨額のカネを得たのだから「無償の愛」ではないのではないかという批判もあります。

「それは極論やと思う。皆さん、親が死んだら財産は全部寄付するかというと、違うでしょう。それでも、それを打算の愛とは言わない。何も読者のお金をとったわけではない。たかじんさんは尽くしてくれた嫁さんに、後の生活に困らないようになんぼか渡したいと考えた。それも遺産の4分の1もないくらいの額です。庶民的な目星で1億は高いからカネ目当てだと言うなら、これはもう、そう思う人がいても仕方がない。そもそも『殉愛』の中で『無償の愛』とは一行も書いていない。僕はそんな青臭い言葉は使わない。世間が勝手にイメージをつけて、勝手に怒っているんです」

――さくら氏がたかじん氏と結んだという「業務委託契約」についてはどう考えるか。

「たかじん氏には何としてもさくら氏にお金を残しておきたいという意図があった。さくら氏がお店(たかじん氏と出会う前経営していたイタリアのネイルサロン)の出店をとりやめた時の賠償費用、(看病中の突発性難聴で)耳が聞こえなくなったことに対する慰謝料、『秘書契約』のお金と、あくまで覚え書きを書いていた。さくら氏のほうから請求しているわけではなく、こういう覚え書きがありますというのを全部裁判所とかに提出しているわけです」

――さくら氏は自身の陳述書でも、1億8千万円は自分のものと主張していた。

「陳述書についてはよく知りません。本人に確認していただきたいが、さくら氏は税務署に資料を預け、好きに判断してくれと言っている。全然こだわっていない。彼女自身がそれを今、ポケットに入れている状況ではありません。お嬢さんは遺言の無効を裁判所に訴えているが、無効になれば寄付分がなくなり、さくら氏も、より多くの遺産を得ることになる。みんなこれを忘れてる。さくら氏は、それでも遺言をしっかり守って6億円を寄付しようとしているんです」

――Hさんは、百田氏が自分に取材をしなかったことをノンフィクションとしておかしいと指摘しています。

「細かく言うと、お嬢さんを傷つけることになりかねないので言いませんが、直接取材をしなかったのには理由があります。内容については裁判所で、お互いに真実を求めやっていきましょう」

 Hさんが幻冬舎を訴えた裁判は15年1月に開かれる。真相はどこまで明らかになるだろうか。

(本誌取材班)

週刊朝日  2014年12月26日号より抜粋