プロに任せっきりで資産運用ができる「ラップ口座」が大人気だ。ラップ口座のラップ(Wrap)は英語で「包む」の意味。証券会社などに、自分の資産を数百万円以上、一括して預けて運用してもらうというもの。運用はすべて金融機関の担当者がしてくれる。最近、利用者が急増しているのだ。
日本投資顧問業協会によると、6月末時点の契約件数は12万件以上と、昨年3月末の2.5倍に。預けられている金額(残高)は約1兆6千億円と、2012年3月末と比べて3倍近くに拡大した。特に、13年3月以降では8千億円以上も増加している。
どうして、急速に伸びてきたのか。
その大きな理由は、利用できる最低金額がここ数年で大幅に下がってきたからだ。開始当初は大口の利用者しか契約できなかった。例えば、野村証券は3億円からだったが、いまは500万円から可能だ。SMBC日興証券は昨年、1千万円から300万円に下げた。
一人ひとりに合った運用プランをつくる「オーダーメードの資産運用」という資産家向けのサービスコンセプトはそのままで、最低利用額が大幅に下がったことで、退職金や預貯金を元手に契約する人が出てきているようだ。インフレが進むと預貯金が目減りするということも後押ししている。
ラップ口座の利用の流れを簡単に説明しよう。
まず証券会社など金融機関に出向く。そこで、どのような商品に投資するかなど運用スタンスの相談をする。運用スタンスが決定したら、それに応じて金融機関が資産を運用してくれる。
ただ、ラップ口座の裾野は広がってきたばかり。投資できる商品や運用スタンスは各社で異なっている。複数の金融機関で説明を受け、内容を比較して納得したうえで契約しよう。窓口に行って丁寧に説明してもらい、すぐに契約する……ということは避けたほうが無難だ。
「『退職金が出た』『株高になったから』と興味を持って相談に行って話をしているうちに契約してしまった、ということがないようにしたいですね。ご家族の方と一緒に行って意見を聞いたほうがいいでしょう。もちろん、すぐに必要になるような資金は取っておいて、余裕資金だけで契約するようにしましょう」(資産運用に詳しい京都大学経営管理大学院の川北英隆教授)
※週刊朝日 2014年10月17日号より抜粋