「タワーマンションを買うにはいまが最後のチャンスかもしれません」
こう話すのは、『知らなきゃ損する!「21世紀マンション」の新常識』(講談社)などの著書のある住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏だ。
2020年に開催される東京五輪に向け、今後、タワーマンション市場が活況になる可能性が高いからだ。資産運用として将来の値上がりが期待できる可能性があるという。
「不動産会社が売れ残りを恐れ、まだ抑えた価格で売っているいまが、タワーマンション購入の好機だ」と櫻井氏は話す。
とくに江東区などの湾岸エリアは、五輪の競技開催地に予定されており、狙い目だという。江東区以外でも、JR品川駅周辺の物件が注目される。品川駅の地下にリニア中央新幹線の始発駅ができる計画で、田町駅と品川駅の間に新駅が設置され、周辺地域の再開発も予定されている。
「タワーマンションの人気が高いのは、再開発など街づくりとセットで建設されることが多く、周辺環境などを含めた『総合点』が高いからです」(櫻井氏)
ちなみに、タワーマンションに明確な定義はないが、建築基準法では、高さ60メートル(20階に相当)を超える建物に耐震性を測るための性能評価を義務付けていることから、ここでは20階以上の超高層マンションを「タワーマンション」と呼ぶ。
値上がり期待だけでない。中古を購入して賃貸にまわせば安定的に家賃収入を得ることができるのだ。タワーマンションは一般のマンション以上に、法人からの需要が期待でき、より安定した運用が可能になるという。
『「売れる」「貸せる」マンション購入法』(週刊住宅新聞社)などの著書のある住宅コンサルタントの野中清志氏が語る。
「企業が社宅としてタワーマンションを借りることが多いのです」
東京は金融サービス業やIT企業が多く、「職住接近」を求める会社員が多い。駅に近く、会社まで一本の路線で通える都心部のタワーマンションはそうした企業のニーズに合う。法人との契約は、専門の仲介業者に頼むことも可能だ。
こうした中、外国人投資家がタワーマンション投資への意欲を高めているという。その背中を押しているのが、円安の進行だ。
1ドル=80円の為替レートであれば、1億円のマンションを買うには125万ドルかかる。円安になり1ドル=100円になると100万ドルですむ。為替レートは2年前の1ドル=70円台後半と比べると、20円以上も円安になっている。外国人にとって割安感はかなり増しているのだ。
ここにきて、さらに円安が進む可能性が出てきた。米国が早期に利上げに踏み切る公算が大きいからだ。8月22日には、約4カ月半ぶりに一時104円台を突破し、年内に110円台に乗せるとの見方も出始めた。
元々、東京のマンションは、外国人にとって、台湾やシンガポール、ニューヨークなどに比べて「格安」だ。前出の櫻井氏によれば、今年のはじめ、東京都心部の100平方メートルクラスのマンションは1億2千万~1億5千万円程度で売られていた。台湾の台北中心部の同じ広さのマンションだと日本円換算で2億円、シンガポールでは3億円だったという。
割安感から外国人投資家がさらに資金を振り向けてくれれば、市場は今以上に活況になりそうだ。そうなれば、日本の投資家にとっても、メリットは大きい。
ただ、やみくもに投資をしても失敗する可能性が高い。資産価値のある物件は限られるからだ。
新宿、池袋、品川などJR山手線の主要駅周辺や前述した湾岸エリアのように、都心までの交通アクセスに優れた物件を選びたい。
だが、駅に近いというだけでは不十分らしい。
「敷地が狭かったり、細長かったりすると、今後、隣接地に別の高いマンションが建って眺望が妨げられる可能性がある。そうならないよう広くて正方形の敷地の物件のほうがいい」(野中氏)
※ 週刊朝日 2014年9月5日号より抜粋