経済学者や元国会議員ら18人で作る団体「平和と安全を考えるエコノミストの会」(EPS)が5月22日、「東アジアの安定と繁栄のために─日中韓の共存共栄をめざして」と題する提言を発表した。

 署名者の一人として名を連ねていたのは、安倍首相の経済ブレーンとして有名な米エール大名誉教授の浜田宏一・内閣官房参与。EPSのメンバーで、かつて理事長も務めた中心人物だ。

 今回の提言は、安倍政権と中国、韓国との関係悪化を懸念した内容で「尖閣諸島をめぐる問題の事実上、棚上げ」や、「村山談話、河野談話の踏襲」「首相や主要閣僚による靖国参拝を控える」などの意見が盛り込まれた。しかし、メンバーが首相官邸に提言の受け渡しを申し入れたところ、けんもほろろに断られたというのだ。

「集団的自衛権の行使容認の危うさについても会で話題に上ったが、提言は経済に直結する外交政策に絞りました。安倍首相は多忙で、菅義偉官房長官に渡すことになりました。事前に内容を知りたいというので伝えると、『安倍内閣の政策とまったく違うので受け取れない』と、手のひらを返すように断られました」(EPSメンバーの一人)

 アベノミクスの理論的支柱であった浜田氏らの提言すら黙殺。それほどまでに、今の安倍首相は「前のめり」になっているのだ。

(本誌取材班=小泉耕平、原山擁平、一原知之、古田真梨子、牧野めぐみ)

週刊朝日 2014年7月18日号より抜粋