気候変動への取り組みが叫ばれる中、早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は、将来必ずしも温暖化するとは限らないため、対策には注意が必要だという。
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環境省の研究プロジェクトチームが3月17日に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新シナリオを基に、世界の温室効果ガスの排出量がこのまま増え続けると、日本の平均気温は世紀末には最大で6.4度上昇し、熱中症など暑さによる死亡リスクは、最大13倍まで増えるとの報告書を出したという。懲りない人たちだとつくづく思う。CO2の排出量は増え続けているが、1997年以後、世界の平均気温は上昇していないのである。
IPCCは設立時から、人為的温暖化は正しいとの前提で機能している組織で、それ以外の予測は出せないのかもしれないが、1990年頃の予測では、現在の気温はもっとずっと高いはずではなかったのか。近未来の気温すら予測できない組織が、100年後の気温の予測は正しいと主張してもね。信じろという方が無理ではないか。IPCCがCO2を削減しないと今に大変なことになると警告しても、国際政治の舞台では、削減のめどさえ立っていないのは、実はまともな人は誰も信じていないからである。
はっきり言って、コンピュータのシミュレーションによる気候予測は科学ではないと思う。実証も追試もできないからだ。いろいろな意味で話題になったSTAP細胞は、その真意が実証可能であるが、IPCCの予測は実証不能なばかりでなく、間違っていても誰も責任を取らない。さらに問題なのはこの研究には膨大な税金が使われていることだ。もっと問題なのは、この予測を金科玉条にして、ほとんど無意味なCO2の削減政策に湯水のように税金が使われていることだ。
日本はわずかなCO2排出量抑制のために年に1兆円以上の税金を注ぎ込んできた。よしんば、IPCCの予測が正しいとして、日本がこれだけの金を使ってCO2の排出を抑制しても、世界の気温上昇の抑制にはほとんど何の役にも立たないのだ。日本のCO2の排出量は全世界の4%くらいである。たとえ、鳩山元首相がぶち上げたように25%削減しても、世界のCO2をたったの1%削減するだけだ。
それでもCO2の削減策をやめないのは、税金をむしり取ろうとする利権集団が暗躍しているからだ。原発推進しかり、ソーラーパネルやエコカーの補助金しかり。私は将来温暖化しないと言っているわけではない。温暖化するか寒冷化するか、それは分からない。未来の気候予測は人知を超えるからだ。限りある税金はそのための適応策にこそ使うべきなのだ。
※週刊朝日 2014年4月18日号