砂漠に建っている家々。こういう家が増えていって集落が町になる。そうせざるを得ない厳しい状況はありつつも、それでも生きていく人間の逞しさを感じる
砂漠に建っている家々。こういう家が増えていって集落が町になる。そうせざるを得ない厳しい状況はありつつも、それでも生きていく人間の逞しさを感じる
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「地上絵見られなくても酔わないぞ」という悲壮だが本末転倒な覚悟の表情
「地上絵見られなくても酔わないぞ」という悲壮だが本末転倒な覚悟の表情
セスナの窓から見える「宇宙人」と呼ばれる地上絵。撮影はもちろん家内。僕も肉眼で確認はできました
セスナの窓から見える「宇宙人」と呼ばれる地上絵。撮影はもちろん家内。僕も肉眼で確認はできました
ナスカ地上絵の中でも代表的な物のひとつ。「ハチドリ」。これもなんとか見られた。本物のハチドリの方が見るのは楽だったなあ
ナスカ地上絵の中でも代表的な物のひとつ。「ハチドリ」。これもなんとか見られた。本物のハチドリの方が見るのは楽だったなあ

 チチカカ湖からリマに戻り、美人ガイドのステファニーさんと再会。
 いよいよペルー旅行も終わりが近づいてきました。
 最後の観光はナスカの地上絵見学です。

 ナスカ空港や、リマから飛ぶ経路もあるようですが、僕たちはリマから車で4時間ほど走ったピスコ空港から飛ぶというルートになりました。
 リマの都心から郊外へ車を走らせながら、いろいろとペルーのお国事情をステファニーさんから聞きました。
 ペルーでは、家を建てる時まず一階部分を建てる。経済的に余裕が出来るとその上に2階3階を増築していくというのが普通なのだそうです。
 というのは、建築中の家には税金がかからないかららしい。だから、屋根の上に鉄の棒のようなものが突き出している家が多い。これはこの屋根の上にまだ増築する為の土台のようなもので、これがあるとその家はまだ完成していないと見なされるらしいのですね。
 なるほど、都市部から郊外へと抜ける道すがら家々を見てみると、結構な数の家がビルのように平たい屋根の四隅から鉄の棒が突き出している。
 たくましいなと感心していると、ピスコへ向かう途中の砂漠地帯でもっと衝撃的な光景を見ることになりました。
 リマという地域は、砂漠地帯なのですが地下水があるとかで都市ができるのに問題ない。暖流のせいか、1年の大半が曇りなのですが大雨も降らないという不思議なところだそうです。
 確かに車で都市部を抜けて30分ほど行くと砂漠が広がっている。
 ですが、その砂漠に、点々と作りかけの家が並んでいるのです。
 それは何かというと、例えば地方から仕事を探してリマに出てきた家のない人間が、勝手に自分たちで家を作っているのですね。はじめはほんとに板で囲っただけの掘っ立て小屋ですが、仕事を見つけお金が出来ると段々家らしくしていく。もちろん建築業者に頼むわけではなく、自分たちで作っていくのだそうです。
 そしてその辺りに住む人間が増えて集落として認められると、国が電気や水道などインフラを整備してあげる。
 要は、自分たちで町を作り国に認めさせるということらしいのです。
 これには驚きました。雑草が生えるように、砂漠に家を建てていく。そして町として認めさせる。確かに貧しい暮らしでしょう。それでも、人はどこでも生きていけるという力強さも感じさせてくれる話でした。

 さて、ピスコ空港に到着しました。
 ここからセスナに乗って往復1時間、地上絵の観光に30分という1時間半のフライトです。
 見る地上絵は全部で12。
 観光用のセスナは左右に窓があるので、あわせて24回は急旋回をする。
 乗り物に弱い人間だと飛行機に酔うと聞いて、僕は緊張しました。乗り物酔いするタチなんです。
 酔わないコツは、頭を動かさないことだと聞いて、とにかく目線を斜め下に固定して動かさない。その視界の中で見られる地上絵だけを見る。見逃したからと言ってキョロキョロと頭を動かしたりしないぞと、地上絵の観光よりも酔わないことを優先するという本末転倒な覚悟で、セスナに乗り込みました。
 三つほど見逃しましたが、なんとか酔わずに戻って来られました。でもあと三つ見る地上絵があったらやばかった。そのくらいギリギリでした。
 まあ、酸性雨で消滅するかもという噂もあるナスカの地上絵です。多少無理をしても、今見ておいてよかったとは思っているのですがね。あのセスナには一度乗ればいいかな。全然平気で右左キョロキョロしながら写真を撮っていた家内がうらやましいです。

 こうして、ペルー旅行は終わりました。
 これで南極以外の四大陸には行ったことになります。
 最初は治安が不安でビビっていたペルーですが、結果的にかなり珍しい体験が出来た休暇でした。