謎の飛行物体の目撃情報が相次いでいる。

 まずは1月7日午前11時40分ごろ。山形県川西町で、町立玉庭小学校の小林孝校長が、山の上に浮かぶ半透明の不思議な物体を撮影。写真が12日付の毎日新聞朝刊に掲載されると、ネット上で真贋論争が始まった。

 また23日の午後9時ごろ、山形から1700キロ以上離れた那覇市上空でも、複数のオレンジ色の光が目撃された。25日付の沖縄タイムスはそれを「謎の光」と報じた。ひと月に2度も、謎の飛行物体が新聞に取り上げられることは非常にまれだ。「すわ、未確認飛行物体(UFO)の出現か」とあわてた(喜んだ)人も多かったのではないか。

 だがその後、那覇市で出現した「謎の光」は在沖縄米海兵隊の照明弾だったことが判明。沖縄タイムスの阿部岳記者が語る。

「目撃者が相次ぎ、おもしろい現象だと思いました。UFOを噂する声もありましたが、天文関係者や在沖縄米軍に問い合わせた結果、正体が判明しました」

 疑似科学ウオッチャーの皆神龍太郎さんは、一連の報道を冷静に考察する。

「照明弾がUFOに間違われたというのは、よくある話です。歴史を振り返れば、目撃情報のほとんどが軍事演習などの露呈か、ただの見間違いなのです」

 ただ一方、山形県で撮影された半透明の物体の正体は明らかになっていない。

 UFO研究家のX51氏に見解を聞いた。

「カメラのレンズにゴミや水滴が付着しても、このサイズであれば、普通は写りません。背景全体にピントが合っていますが、謎の物体はボケており、距離感や縮尺がわかりにくい。高速で移動中の鳥か、ビニール袋だと思われるのですが……」

 あるのは1枚の写真のみ。謎は深まるばかりだ。

 そもそもなぜ、謎の飛行物体に関する目撃情報が続いたのか。前出のX51氏は、こう分析する。

「アメリカでは『軍事的緊張や社会的不安が高まると、防衛本能から人々は空を見上げて、UFO騒動が増加する』という説があります。日本の現状におきかえてみると、意味深ではないでしょうか」

 UFOが「ロマンの対象」ではなく「不安の象徴」になってしまったとしたら、何とも寂しい限りだ。

週刊朝日  2014年2月14日号