消費税率の引き上げに加えて、医療や年金といった社会保障の縮小もある。年金世代も「家計崩壊」の危機に直面していると、「家計の見直し相談センター」のファイナンシャルプランナー、藤川太氏が驚きの試算結果を示す。

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ここでは「年金世代」を70~74歳の夫婦と設定しました。

 総務省の家計調査によれば12年、世帯の公的年金給与は平均で月19万5千円あまり。それ以外の社会保障給付などを加えて年収は267万5千円となります。それに対して、負担増は年収の17.3%にも達してしまいます。「現役世代」をはるかに上回る厳しさに見舞われるのです。

 国民年金の1人あたりの支給額は12年度の平均で月5万4856円ですから、仮に支出額が変わらないままでこれしか収入の道がなければ、負担増は夫婦の年収合計の35%に達する計算です。「破綻」に直結すると言っていいでしょう。

 支出面では、「現役世代」と違って医療費が重くのしかかります。病院での自己負担割合が1割から2割になる、つまりは医療費負担が2倍になるわけです。病院に行くのもためらってしまうほどの金額でしょう。

 インフレの影響も大きいのですが、問題は、それに年金支給額が追いつかないこと。年金は本来、賃金や物価の上昇に応じて支給額が増えるものでした。それが04年の制度改正で、保険料を支払う現役世代の減少、受け取る高齢層の増加という少子高齢化に対応して、支給額の伸びを調整する枠組み「マクロ経済スライド」を導入しました。

 この結果、いまのところ年金支給額の増加率を物価の上昇率から0.9%幅引くことになっています。2%のインフレなら年金は1.1%しか上がらないことになります。

 それに加えて、デフレの帳尻合わせがあります。これまで物価が下がるデフレに伴って支給額を抑えるはずなのに、それをしてきませんでした。そこで13年度からの3年間で支給額を合計2.5%引き下げることになっています。

 安倍政権の経済政策は、歴代の自民党政権とは違って「高齢者ねらい撃ち」の姿勢を本格化させたと言えるでしょう。

 年金世代がこの負担増を克服するのは、「現役世代」よりも格段に難しい。保険料、住宅ローン、子どもの教育費といった大きな固定費の支出がなくなった世帯が多いからです。

 そうなると、変動費をやりくりするしかありません。家計調査によれば、「3大支出」の食料、教養娯楽、交際費で合わせて月11万2千円近くになります。これを3分の1以上削らなければなりません。食費を守るとなると、あとの二つを4分の1まで落とす計算になります。もはや孫へのお年玉やお小遣いの捻出に困るほどの緊縮生活になってしまうでしょう。

「年金世代」の負担増について、試算結果を本誌で紹介しています。

週刊朝日 2014年1月31日号