眠りに不安を抱える人は多く、不眠によって生じる日本経済の損失は年間約3兆4700億円ともいわれている。どうすれば質の高い眠りに出合えるのだろうか。
ベッドには、眠りに落ちるギリギリのタイミングで入るのがいい。
「早く寝室に入れば早く眠れると思いがちですが、これは勘違い。目がパッチリした状態で横になると『眠れない、眠れない』と考えてしまい、逆効果です」(杏林大学医学部精神神経科学教室の古賀良彦教授)
もちろん疲れ具合にもよるが、起きる時間が遅いと、理屈の上では早くは眠れない。睡眠物質であるメラトニンの分泌が始まるのは、朝、強い光が目に入って約14時間後だからだ。
寝るときの照明はできるだけ落とす。ただし高齢者の場合はトイレ時の転倒の問題などもあるので、足元の明かりなどはつけておいたほうがよさそうだ。
つい蛍光灯をつけたまま、ということもあるだろうが、電気をつけたまま寝ると、まぶたを通して弱いながらも光が入り、メラトニンの分泌が抑えられてしまう。
「夜中に光が入ると、深い睡眠が減ります。一方、朝、体内時計をリセットするには5千~1万ルクス必要です。冬は起きたら15分ぐらい、窓辺で日差しを浴びたいですね」(国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長)
メラトニンの分泌を考えると、毎日同じ時刻に起きるのも大切。週末に寝る時間がズレると、朝、目に光が入る時間もズレて、月曜日に起きるのが大変になってしまう。眠りが浅いと気になる場合、「あえて遅く寝て早く起きる」ことを試してもいい。
昼寝は一時的にはスッキリするが、しないにこしたことはない。するなら20分。30分を超えると深い眠りに入って、夜の睡眠の質を下げてしまうからだ。
三島部長、古賀教授とも「絶対ダメ」と強く言うのが、寝酒だ。
「確かに寝つきはよくなりますが、深い眠りを妨げる。常習的に寝酒をすると、目が覚めるようになる」(古賀教授)
※週刊朝日 2013年11月8日号