「いかにガソリン消費を抑えた車社会を実現するか」。自動車メーカーは「脱ガソリン」の次世代エコカーの開発を急ピッチで進めている。その主戦場で争うのは、走行時にCO2などの排出ガスをまったく出さない電気自動車(EV)。そして、水素を酸素と反応させて作る電気で走行し、水しか出さない燃料電池車(FCV)だ。
先陣を切ったのはEVだった。2009年7月、三菱自動車が「アイミーブ」を、10年12月には日産自動車が「リーフ」を発売した。
しかし、販売台数は伸び悩み、苦戦を強いられている。たとえば、リーフの今年9月末までの累計販売台数は日本で3万台、世界では8万3千台。仏ルノーと合わせて、16年度までに世界で150万台を販売する目標の達成は現実的ではないとみられている。
「小型で、近距離移動に特化したアイミーブと異なり、日産はEVでいちばん難しい領域とされるファミリーカーに挑戦しました。その姿勢は評価しますが、ハードルが高かったということです」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表)
ハードルのひとつは車両価格だ。リーフの場合、国の補助金を使っても220万円以上する。それでも、環境性能や加速性能に優れ、停電時には家庭に電気を供給することもできるのがEV。一回の充電でガソリン車並みに400~500キロ程度走行できれば決して高くはないのだが、リーフの場合は228キロ。実際はその半分程度の距離とされる。
高速道路のサービスエリアなどに設置されている急速充電器を使えば約30分で80%まで充電できるため、設備の整備が進めば、ドライブ途中でバッテリー切れとなる心配はない。ただし、急速充電器の数はまだ全国で約1900基(9月末時点)にすぎない。
「一回充電して、郊外のゴルフ場と往復できない程度の走行距離ではユーザーの不安感が強いのです」(中西代表)
自動車メーカー4社は、来年10月をめどに急速充電器を4千基、普通充電器を8千基、共同で設置するなどインフラ設備を進めるが、同時に車両価格の低下を実現できるか。
「ここ数年がEVにとっての正念場でしょう」(自動車評論家の松下宏氏)
※週刊朝日 2013年10月25日号