相続がうまくいくかを左右する重要な要素、不動産。しかし、不動産の「共有」はトラブルになりやすいと専門家は指摘する。

「共有」とは、複数の人が、ある不動産の所有権を2分の1、3分の1などと分けて持っている状態をいう。たとえば、夫婦でマイホームを購入し、夫と妻で2分の1ずつ共有しているという人も少なくないはず。何が問題なのか。『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)の著者で行政書士の竹内豊氏はこう語る。

「こんなケースが実際にありました。夫が亡くなり、妻が相続のために夫の戸籍を調べた。すると、夫に離婚経験があり、しかも前妻との間に子どもがいたことも発覚。さらに現在の妻が夫と住んでいた家は、夫が再婚前に買ったもので、夫と前妻の共有名義だった。こうなると相続はかなり難しい」

 この場合、夫の相続では、現在の妻と前妻の子が相続人となる。遺産分割協議で決着がつかなければ調停沙汰もありえる。責められるべきは夫。生前に、自ら責任を持って財産の整理をし、遺言書を残しておくべきだった。

 相続後の「共有」もトラブルを招きやすい。たとえば母親が亡くなり、自宅の土地を長女、次女、三女の3人で3分の1ずつ共有したとする。そうすると、3人全員の合意なしに土地を売却することは、法律的には可能でも現実的には難しい。『相続のミカタ』(中経出版)の著者で、日本中央会計事務所の代表である青木寿幸(としゆき)税理士はこう話す。

「相続前に仲良しだった家族でも、不動産を共有すると、売ろうとしてもそれぞれが欲しい金額や時期が異なり、意見が衝突します。特に厄介なのは、共有したまま当人が亡くなって、その子どもや配偶者が共有持ち分を相続した場合です。顔を合わせたことのない人同士で共有してしまうと、もはや話し合いの場をセッティングすることすらできません」

 共有の不動産があれば、当人同士で話し合い、誰か一人の単独所有にするのが一番。ただその際には、持ち分を失った人に対する代償金などの手当てが必要となるだろう。

週刊朝日  2013年10月18日号