初公判後に弁護士(手前)とともに会見した男子生徒の両親(9月5日) (c)朝日新聞社 @@写禁
初公判後に弁護士(手前)とともに会見した男子生徒の両親(9月5日) (c)朝日新聞社 @@写禁
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 昨年12月、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のキャプテンだった男子生徒(当時17歳)が体罰を苦にして自殺した事件で9月5日、男子生徒への傷害と暴行の罪で起訴された当時の顧問教諭、小村基(はじめ)被告(47)の初公判が大阪地裁であった。起訴の決め手になったともされる「ビデオ映像」が公開され、法廷に戦慄(せんりつ)が走った。

 小村被告は、起訴内容を認め、遺族に深々と頭を下げて謝罪した。だが、検察側が証拠として、自殺前日の昨年12月22日、桜宮高校であったバスケットボール部の練習試合を撮影したビデオ映像を公開すると、法廷の雰囲気が変わった。

 この映像は体育館の2階から撮影されていた。試合中にもかかわらず、小村被告はプレーをしていた男子生徒を平手で殴りつけた。さらにコートの中を追いかけ、体育館の壁に追い詰め、逃げられないようにして20発ほども殴り続けていた。

 バチン、バチンという平手打ちの音が、かなり遠くから撮影されていたビデオ映像にはっきり記録されていた。検察側は、「口が血まみれになっても殴っていた」と指摘した。

 被害者参加制度を利用して男子生徒の母親(45)も小村被告への質問に立ち、激しく追求した。「ビデオ映像では30秒近く殴っている。何を考えて殴ったのか」。

 小村被告は小さな声で答える。「指導です。強くなってほしいと……」。

 母親はさらに続けた。「あなたの調書を読みました。『鼓膜が破れないように叩く。生徒が動くと破れることがある』と書いてあった。(鼓膜が破れたら)責任は生徒なのか?」「指先で触るように殴るとも話していた。なぜ、それでケガをするのか?」

 母親の厳しい問いかけに、小村被告は無言で何も答えられない。さらに母親は、男子生徒が小村被告に対してキャプテンを続けると約束したときのことを聞いた。

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